面会交流について~離婚~

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回も、離婚についての総論を述べた、「離婚をすると決めたら(総論)」

の各論として、「面会交流」について、述べようと思います。

 

離婚をすると決めたら(総論)~離婚~

面会交流は、離婚における話し合いにおいても、非常に悩ましいテーマになることが多いです。

面会交流が争われている場合、

「子供に会わせろ」という主張と、「子供はとてもじゃないが会わせられない」という主張が真っ向から対立することが多く、話し合いは容易ではありません。

しかし、どこかで裁判所は一定の判断をする必要があります。

 

では、家庭裁判所は面会交流について、どのようなスタンスなのでしょうか。

家庭裁判所は、

「子供を監護していない親と子が交流することは、子の健全な成長にとって有益であり、面会交流を制限すべきような事情のない限り、積極的に面会交流を認めるべきだ」としています。

 

総論としては、私も完全に同意するところではあります。

しかし、この裁判所の考え方は、いくつかの部分に分けて考える必要があります。

1 「積極的に面会交流を認めるべきだ」という部分

2 「「子供を監護していない親と子が交流することは、子の健全な成長にとって有益であり」という部分

3 「面会交流を制限すべきような事情のない限り」という部分

です。それぞれについて述べます。

 

1「積極的に面会交流を認めるべきだ」という部分について

総論としては、私も完全に同意いたします。

しかし、相談を受ける事件によって、面会交流が「本当の意味で」望ましいものかは千差万別で、面会交流はさせるべきだ!と理由なく言い切ることは到底できません。

そもそも、全く理由なく子供を相手方に会わせない親は(基本的には)おらず、何らかの理由を抱えています。

すなわち、裁判所の言う、「面会交流を制限すべきような事情」の判断は、そもそも、容易ではなく、個別のケースによる判断が極めて重要となります。

一律的に「会わせるべきだ」、「会わせるべきではない」などと言えるものではないのです。

個別のケースによって、裁判所による慎重な判断が求められる部分とも言えるでしょう。

 

2 「「子供を監護していない親と子が交流することは、子の健全な成長にとって有益であり」という部分について

この部分は、「一般的にはそれはそうだろうなあ」と流されがちですが、裁判所は、かなり重要なことを言っています。

 

先程、面会交流においては、「子供に会わせろ」という主張と、「子供はとてもじゃないが会わせられない」という主張が真っ向から対立することが多いと申し上げました。

しかし、実は、「子供と会わせろ」という主張は若干ずれている主張なのです。

上記の主張は、「『私が』子供と会わせろ」という主張ですから、親としての自分が主語になっているところがポイントです。

しかし、面会交流は「親」の権利ではありません。

 

では、面会交流はどういうものなのでしょうか。

面会交流とは、「子供が、」子供を監護していない(別居して育てていない)親と、会う(面会する)等して交流することを意味するもので、

これは、主語が、「子供が」となっているところが重要です。

すなわち、面会交流は親の権利ではなく、「子供の権利」なのです。

裁判所が、「子の健全な成長にとって有益」と言っているのは、「子供の権利を第一に考えてくださいね!」と言っているということなのです。

法律のたてつけとしても、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(民法766条1項)となっています。

そのため、上記の、「子供に会わせろ」との主張では、親としての自分の権利を主張しているに過ぎず、面会交流の本来の考えからずれてしまっているのです。

 

一方当事者が、上記のような「親」としての権利を前面に出しているような場合には、トラブルになりがちです。

子供のことを第一に考えていれば、発せずに済むような不用意な一言を言ってしまい、相手の態度が硬化してしまうこともあるからです。

子供の権利であること(何が子供にとって一番か)を念頭に交渉をすれば、交渉のハードルが少しは下がるかもしれません。

 

一方、会わせる側にとっても、子供を相手方に会わせるのは抵抗があるのは自然な感情です(その感情を否定するつもりは一切ありません。)。

しかし、子供にとって、面会交流をするのが成長にとって、プラスになるのであれば(子供が会いたがっているのであれば)、子供を育てている側の親は、相手方がいかに憎かろうと、会わせるのが望ましいといえます。

そもそも、親同士は、離婚に向けた話し合いをしている以上、関係が穏やかでないのは当然です。

そのことは、とりあえず置いておいて、子供にとって、相手の親と会うことが「本当の意味で」プラスならば、会わせるべきでしょう。

逆に言えば、子供を相手方に会わせるのが明らかに悪影響であれば、会わせない選択と取ることも、当然あり得ることです。

その場合には、別途手続きもすることも十分にあり得るでしょう(後述します。)。

 

なお、幸いにして、トラブルなく、子供と実際に会えているとき(面会交流ができているとき)も、自らの行動が、子供の成長にとって良いかを考えなければなりません。

子供と会っているときに相手方の悪口を言うなどというのはもってのほかです。

相手方の悪口を聞かされたら、子供は自分のことのように傷つき、不安定になります。成長にとって良い影響があるはずがありません。

そのようなことは絶対になさらないよう、肝に銘じて頂きたいと思います。

大事なことは、両親が一緒にいられなくなったとしても、子供は二人にとって何よりも大切なものだ、ということを子供に伝え続けることなのです。

 

3 「面会交流を制限すべきような事情のない限り」という部分

この部分の具体的な判断をするのが、裁判所での調停、審判での判断です。

「子供は会うべきだ」「会うべきではない」という判断は、最後は(審判になれば)裁判所が判断します。

 

その際の手続きを最後に示します。

・子供と会わせてもらえない場合、家庭裁判所に子との面会交流を求めて、調停又は審判の申立てをすることができます(民766条、家事別表第2の3項)。

・逆に、子供と相手方が会うのが絶対に悪影響で、会わせるべきではないとの確信がある場合には、家庭裁判所に、面会交流を禁止する調停あるいは審判を申し立てることになります(民766条2項、家事別表第2の3項)。

・これは、本件とは若干テーマがずれますが、相手方が子供を連れ去ってしまった場合には、家庭裁判所に子の引渡の審判の申立て(民766条、家事別表第2の3項)をし、併せて、審判前の保全処分の申立て(家事106条)をすることになります。

これらの手続きの詳細については、別途の機会に述べることと致します。

 

※ あわせて読みたい記事

その①

面会交流を求める交渉時に気を付けたい6つのこと~離婚~

その②

離婚をすると決めたら(総論)~離婚~

 

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