面会交流を求める交渉時に気を付けたい6つのこと~離婚~

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回は、非監護者(つまり、自ら子供の養育をできていない方)が、

監護者(子供の養育をしている相手方)に対して、面会交流を求める交渉をする際に気を付けて頂きたい6つのことをお伝えいたします。

 

面会交流というのは、お子様を養育できていない方にとっては、お子様とコミュニケーションを取る重要な手段であり、

また、お子様にとっても、普段会えていないもう一人の親と会うことができるというのは、その成長にとって、重要な機会といえます。

そのため、面会交流については、定期的に円滑に行われるのが望ましいのは間違いないでしょう。

一方で、離婚をすることになる(離婚をした)相手に対して、子供と会う機会を求めることになるのですから、なかなか関係が穏やかとはいえません。

そのようなお相手に対し、どのようなスタンスで交渉に臨めばよいか、というのはなかなか難しいテーマといえます。

 

そこで、今回は、面会交流を求める交渉をする際に、是非、気を付けて頂きたいことを6点ほど申し上げたいと思います。

 

目次

1 同じ子供の親としての信頼関係の構築に努める。

2 面会交流と養育費(婚姻費用)は切り離して考える。養育費(婚姻費用)は必ず支払う。

3 養育費は必ず「子供の名義」の口座に支払う。

4 仮に思ったように面会交流ができなかったとしても、養育費(婚姻費用)は払い続ける。

5 長期的利益を見据える。子供と長期的に良い関係を築くことこそが得られる最大の利益

6 最後に困ったら裁判所の手続きで

 

では、本編です。

 同じ子供の親としての信頼関係の構築に努める。

面会交流の交渉の相手は、離婚をする(離婚をした)相手となりますから、当然、関係は穏やかではありません。

色々と言いたいこともあるかと思います。

しかし、お子様との関係においては、同じ子供の父と母という関係であることは、これからも変わりません。

また、お子様との関係が良好になるためには、交渉相手となる妻(夫)(あるいは元妻(元夫))との関係でも、最低限度のコミュニケーションが出来ることが望ましいといえます。

そのためには、必要以上に攻撃的な姿勢を見せてはいけません。

例えば、

「面会交流の不履行1度につき、監護者は金〇〇円を支払う」との文言を合意書に入れて欲しい、との要求をしたらどうでしょうか。

相手方の印象は非常に悪化するといえるでしょう。

面会交流を実現するという目的のために、ペナルティによって強制をしようというのは、明確に悪手(あくしゅ)です。

このような条件で相手方が受け入れる余地はないでしょう。

むしろ、こちら側としては、

「養育費は必ず払うので、定期的な面会交流の機会を作って欲しい。」

程度の要望が穏当なのではないかと考えます。

相手方との信頼関係をつくることができてくれば、自然と面会交流も円滑に実施できる方向になるといえるでしょう。

そして、どうしても、信頼関係をつくることができず、面会交流も実施されない状況であれば、家庭裁判所の手続(→「6」)の中での解決を図ることになるでしょう。

 

2 面会交流と養育費(婚姻費用)は切り離して考える。養育費(婚姻費用)は必ず支払う。

面会交流を求めながら、養育費(離婚前であれば婚姻費用)を支払っていなかったらどうでしょうか。

相手方の印象も非常に悪くなりますし、裁判所への印象も非常に悪くなります。

(※なお、仮に、離婚前で親権を求めていた場合に、子供の監護者に対し、婚姻費用を支払っていなかったら、ほぼ親権を得るという目標を達成することはできないと考えてください。)

そもそも、養育費は、子供の為の費用です。子供を思うのであれば、絶対に払わなければなりません。

婚姻費用(離婚前)だって、子供と配偶者のための生活費です。相手方にお金を払うのが面白くなかったとしても、その意味合いは、子供の為の生活費であるとの色合いが非常に強いものです。

養育費も、婚姻費用も支払わなければ、困窮するのは、お子様自身です。

面会交流を求めるに際しては、絶対に、養育費も、婚姻費用も怠らずに支払わなければなりません。

 

3 養育費は必ず「子供の名義」の口座に支払う。

養育費を払うに際しては、相手方に子供名義の口座を作ってもらい、そこに支払う旨を伝えてください。

相手方が、自分も口座に支払って欲しいと言ったとしても、子供の口座に支払う旨を強く伝えても良いと思います(相手方も、支払ってくれるのであれば、子供の口座に支払ってもらうことについて抵抗をすることはないでしょう。)。

なぜ、子供名義の口座に支払う必要があるのか。

それは、後から、お子様が見た時に、自らが欠かさず子供の養育費を振り込んでいたことが、お子様の目に触れて、責任を果たしてきたことが伝わるからです。

仮に、相手方との関係が非常に悪く、お子様の年齢も小さかった場合には、なかなかお子様と円滑なコミュニケーションを取ることが難しいと考えられます。

しかし、お子様も時間が経過すれば、当然成長して、自分の意思を持ち始めます。

仮に、相手方の影響で、ご自身への印象を良く思っていなかったとしても、どこかのタイミングで自分の通帳を見て、自分名義の口座に欠かさず養育費が振り込まれていたら、どう思うでしょうか。

「親としての責任を果たしてくれたんだ」ということで、関係が良い方向に進む一つの契機になるのは間違いありません。

その意味でも、お子様の名義に振り込み続けるということは、長期的にみると非常に重要なポイントになると考えます。

 

4 仮に思ったように面会交流ができなかったとしても、養育費(婚姻費用)は払い続ける。

仮に、思ったように面会交流ができなかったとしても、養育費(婚姻費用)は払い続けてください。

・・・不合理に思われるかもしれません。

しかし、面会交流も、養育費も、どちらもお子様の為の権利なのです。

「面会交流が実現できなければ、養育費は払わない」という姿勢は、子供に対して、「自分に会わなければ、養育費は払わない」と言っているのに変わりはないのです。

いくつか、この点について補足いたします。

まず、面会交流はお子様の為の権利です。

つまり、「子供が親に会う権利」であり、「親が子供に会う権利」ではありません。

「お子様が会いたいときに、自分の親に会うことができる」というのが最も望ましい状況なのです。

しかし、お子様が成長するに従い、中学(高校)の学校の部活が忙しくなったり等して、自分の望むような頻度で面会交流が実現できないことも観念的にはあり得るでしょう。

場合によっては、お子様が「反抗期」のような時期に入って、自分に会いたくないと言うこともあるでしょう(しかし、それも自然な成長の過程です。)。

お子様も独立した人格をもっておりますから、相手方も、お子様の意思(あるいは都合)を無視して、無理に面会を強制することは出来ません。

そのような状況の中で、思ったように面会交流が実現できないことも、長い、継続的な関係を考えれば、十分にあり得ることです。

しかし、そのような時にこそ、養育費(婚姻費用)は欠かさず払うべきです。

このように、関係が良好とはいえないときに、養育費(婚姻費用)を継続的に払っていればこそ、

長期的に、「お子様との関係」において、良好な関係を築ける可能性が高まるのです。

 

5 長期的利益を見据える。子供と長期的に良い関係を築くことこそが得られる最大の利益。

その意味で、お子様との関係においては、長期的な利益を見据えていただければと存じます。

お子様が成人をすれば、そのそも、親権という概念はなくなります。

お子様が成人してからその後の関係のほうが、むしろ長いとすら言えるのです。

その時に、親権等の概念から解放されたお子様と、良好な関係を築くことができるかは、それまでに、ご自身がどのような対応をしてきたかで決まります。

・お子様の気が乗らないのに面会交流を過度に求めた

・養育費を面会交流の支払の条件にした

・養育費を払わないままの状況を放置していた

等があれば、どこかでお子様にそれは伝わります。

そして、そのような空気をお子様は敏感に察知しますから、やはり、成人後であっても、良好な関係は期待できないでしょう。

 

むしろ、

仮に、面会交流を望んだような頻度出来なかったとしても、

殊更に相手方やお子様を責めることなく、

面会交流が実現できる時を待ち、

一方で、養育費の支払等、自らの責任を果たし続けた場合はどうでしょうか。

そのような姿勢の方のほうが、長期的に見れば、お子様と良好な関係を築ける可能性が高まると言えるでしょう。

私の知り合いや依頼者の方の中にも、離婚して、相手方に親権があったお子様と、そのお子様が成人後、良好な関係を築き、

現在は一緒に働いているという方もいらっしゃいます。

そのような、長期的な利益を見据えていただければと思います。

やはり、

 お子様と長期的に良い関係を築くことこそが得られる最大の利益なのです。

 

6 最後に困ったら裁判所の手続きで。

そういう意味で、裁判所の手続により解決を図るのは最後の手段としなければなりません。

ちょっと面会交流が実現できなかったからといって、裁判所の手続に入るのではなく、子供の気持ちが変わるのを待ったり、時機が来るのを待つべきです。

それでも、

例えば、相手方が会いたがっている子供の気持ちを無視して、会わせなかったり、

子供を虐待しているのではないかと疑われたり、

必要な養育を放棄しているのではないかと感じられたりした場合には、

それは躊躇せず家庭裁判所への申立てをする必要があるでしょう。

手段としては、

・面会交流調停の申立て

・子の監護者指定の申立て

・親権者変更の申立て(緊急性が高ければ、審判前の保全処分の申立て)

・子の引渡の審判の申立て(緊急性が高ければ、審判前の保全処分の申立て)

等、色々とあります。

必要があれば、家裁調査官という家庭裁判所の職員が、お子様の本当の気持ちを聞いてくれます。

しかし、これらの裁判所上の手続は、最後の手段であるとご理解いただき、

そこまで緊急性が高くない場合には、

長期的な利益を見据えて、時機を待っていただくことも、一つ重要なのではないかと考えます。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

 

※ あわせて読みたい記事

その①

面会交流について~離婚~

その②

離婚をすると決めたら(総論)~離婚~

 

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