弁護士の山田雄太です。
ご家族や近しい人が逮捕された場合、すぐに弁護士を探してほしいということを前回の記事で申し上げました。
今回は、弁護士が逮捕された方の早期釈放のために、何を一番必要とするかについて述べたいと思います。
結論から言えば、「身柄引受書」なのですが、
これがないと、早期の身柄解放(釈放)がなかなか容易ではなくなってしまいます。
そこで、身柄引受書が、検察官、裁判官の判断に対してどのような意味を持つのかについて、以下に述べていきます。
目次
1 弁護士は逮捕から72時間以内での釈放を目指す
2 72時間は捜査を完了される(処分を決める)には短すぎる
3 釈放後は在宅事件になる
4 再度被疑者の取調べをしたいときに出頭を確保できるか
では、本編です。
1 弁護士は逮捕から72時間以内での釈放を目指す
まず、前段ですが、
弁護士は、逮捕から概ね72時間以内での釈放を目指します。
(もう少し正確に言うと、勾留決定を取られないように活動します)
逮捕の手続きの中で、捜査機関が被疑者(逮捕をされた人)の身柄を拘束することができる制限時間は、逮捕から72時間です。
この72時間を超えて、被疑者(逮捕された人)の身柄を拘束するためには、「勾留」という全く別の手続きが必要で、捜査機関(検察官)は、裁判官に「勾留決定」をもらわなければなりません。
弁護士としては、この勾留決定を取られないために、
検察官に対しては、「勾留請求をするな」を意見書を出すし、
裁判官に対しては、「勾留決定をするな」と意見書を出すし、
勾留決定が出されてしまったら、「勾留決定に対する準抗告」をするのです。
そのため、弁護士は、
逮捕(警察官の取調べ)
→勾留請求(検察官の取調べ)
→勾留決定(裁判官による判断)
→勾留決定に対する準抗告(勾留決定の判断が誤っているので破棄するように求める申し立て)
のどこかの段階で、逮捕された方の身柄を釈放できるよう、活動をすることになるのです。
言いかえれば、検察官、あるいは裁判官に対して、
「この被疑者は釈放(解放)しても大丈夫だろう」と思ってもらう必要があるのです。
検察官・裁判官に釈放(解放)しても大丈夫だろうと思ってもらうためには、
「身柄引受書」が何よりも重要ということになるのです。
2 72時間は捜査を完了される(処分を決める)には短すぎる
そもそも、逮捕の時間制限である72時間の間に、捜査機関(警察・検察)が全ての捜査を完了させ、被疑者の処分を決めることは不可能です。
被害者がいる場合には、被害者の話を聞き、
その裏付けとなる証拠(例えば防犯カメラ等)を取り、
被疑者をさらに取調べ、
逮捕された被疑者にどのような処分をするのが適切なのかということを判断するには、時間がどうしても足りません。
そのため、捜査機関(警察・検察)による捜査は、72時間を超えても続くことがほとんどです。
その72時間を超えた続きの捜査を、
被疑者の身柄を拘束したままで行うのか、
いったん被疑者の身柄を解放(釈放)したうえで行うのか、
という違いなのです。
その際に、検察官が、「被疑者の身柄を解放(釈放)したとしても、捜査に支障がないか?」という判断をして、
逮捕されている被疑者の身柄を解放(釈放)するかどうかを決めるのです。
つまり、
仮に、逮捕された被疑者が釈放されたとしても、
「捜査は終わっていないぞ。逃げるなよ。捜査の邪魔はするなよ。」
ということが前提となります。
被疑者が逮捕段階で釈放される場合には、
「処分保留で釈放」となるのですが、それは捜査がまだ終わっていないから「処分保留」ということで外に出られるのです。
3 釈放後は在宅事件になる
ということで、逮捕された被疑者の方が外に出られたとしても、捜査は続きます。
「在宅事件」という扱いになります。
(身柄を拘束したままの事件を「身柄事件」というのと対比されます)
当然、被疑者の方は、社会の場に戻ってくることができるので、
何をするにも基本的に何も制限はありません(どこかに行方をくらませることもできます。)。
しかし、検察官としては、被疑者の方の取調べをするため、また検察庁に呼び出す必要があります。
また、捜査が終わっていないので、身柄を解放された被疑者の方が証拠を隠したり、
あるいは、あらたな偽りの証拠を作られたりすることを非常に嫌います。
そのため、検察官としては、
被疑者の方が自宅に帰ったとしても、逃げないか、あるいは、証拠を隠さないかということについては、非常に神経をとがらせるのです。
4 再度被疑者の取調べをしたいときに出頭を確保できるか
その際、「逃げないか」という点については、
被疑者の方のご家族等近しい方であれば、「逃がさない。しっかり取調べに出頭させる。」と、検察官を思わせる資料を用意することができます。
それが、「身柄引受書」です。
「身柄引受書」には、検察庁をあて先として、
「私は、被疑者〇〇の妻(夫、あるいは父・母等)ですが、被疑者〇〇のことをしっかりと監督し、御庁からの呼び出しがあれば必ず出頭させます。」
等のことを書きます。
これによって、
少なくとも、検察官は、
「家族がしっかり監督すると誓約している」
「この被疑者には、身柄引受書を書いてちゃんと監督してくれる家族がいる」
「この被疑者は、わざわざこの家族を捨ててまで逃げないだろう」
という方向に判断してくれる可能性が高まるのです。
もちろん、検察官に
「この被疑者は逃げないだろう。取調べに呼び出せばちゃんと出頭するだろう」
と思ってもらうには、これだけでは十分ではなく、
「ちゃんと定職についているか」とか、
「前科前歴がないか」(つまり前に犯罪をやっていない)とか、
総合的に事情を判断して、釈放をするか否かを決めます。
そのため、「身柄引受書」を書けば、逮捕された被疑者の方の早期釈放ができるというものではありません。
しかし、「身柄引受書」を書くことは、
逮捕された被疑者の方の早期釈放のために、不可欠の要素と言えるでしょう。
逆に言えば、
「身柄引受書」を用意できなければ、被疑者の早期釈放の可能性は、ある場合に比べ、かなり低くなると言えるでしょう。
もちろん、被疑事実(犯罪行為)がかなり軽ければ、「身柄引受書」がなくても72時間以内に外に出て来ることができることもあるでしょう。
しかし、
被疑者の方の弁護人となる弁護士としては、
どうにかご家族等に「身柄引受書」を書いていただくために、全力を尽くすことになるのです。
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