弁護士の山田雄太です。
今回は、離婚に向けて別居する前に準備しておきたいことを、6つお伝え致します。
離婚に向けて、別居をするということは、相手方への明確な意思表示になるほか、別居期間を稼ぐという意味でも非常に重要な選択となります。
しかし、別居をするに当たっては、
相手が離婚原因を争う可能性がある場合、
養育費の額で争いになりそうな場合、
相手方が不貞をしている場合、
相手方と財産分与で争いになりそうな場合
等、今後、争いになる要素がある場合には、別居を決行する前に、十分な準備をする必要があります。
基本的には、争いなった場合にものをいうのは客観的な資料(紙の資料等)になりますから、それをいかに確保できるかが非常に重要となります。
今回は、上記の点も含め、離婚に向けて別居をする前に準備していただきたい6つの重要なことについてお伝えしたいと思います。
目次
1 離婚原因を主張する際の材料となる資料を残しておくこと
2 不貞の証拠を確保しておくこと
3 配偶者の財産状況を出来る限り調査しておくこと
4 別居後の生活場所を確保しておくこと
5 (両親等)身内の方に事前に相談しておくこと
6 重要な荷物は全て持っていけるようまとめておくこと
では、本編です。
1 離婚原因を主張する際の材料となる資料を残しておくこと
別居をした上で、離婚に向けた交渉を始めることになるわけですが、
相手方が、「離婚をしたくない」と言って、離婚の有無を争い始めた場合には、
最後には「離婚原因」が勝負になります。
つまり、最初は、離婚の有無について、裁判所の手続外で協議を模索しても、
合意が得られなければ、調停での話し合いに移行し、
それでも、話し合いがつかなければ、
調停を不調として、離婚訴訟に移行することになります。
そして、離婚訴訟においては、離婚が認められるか否かは、「離婚原因」が認められるか否かによって決まってくるわけです。
よって、話し合いによる解決(離婚合意)の可能性がある場合であっても、最後にこじれた時に備えて、「離婚原因」にあたるような資料を揃えなければなりません。
以下に、離婚原因にあたる資料を列記いたします。
(1)相手方が不貞をしている場合
相手が不貞をしている場合には、明確に離婚原因は認められます。
かと言って、口頭レベルで「不貞をしている」と主張をしたとしても、裁判所においては認定してもらえないので、
配偶者が不貞をしている「証拠」が必要です。
では、証拠は何かということですが、この部分は、下記の「2 不貞の証拠を確保しておくこと」と完全に重複するので、「2」に譲ります。
(2)相手方にDVをされている場合・暴言を吐かれている場合
相手方にDVをされている場合には、身の危険が高まっているので、一刻も早く別居の検討をしなければなりません(実家に逃げることも躊躇してはいけません。)。
そのため、可能であれば、という限りですが、
相手方にDVをされた場合には、何かしらの怪我をしているはずですから、
①「すぐに病院に行きましょう。」
そして、
「診断書を書いてもらう」のです。
診断書に、「全治〇ヶ月」とか「加療〇週間」とか書いてもらえれば、それだけの暴力をふるわれたということが客観的な証拠にも残せます。
キズが完治してしまう前に(あざ等が残っている間に)すぐに病院に行ってください。
②また、キズやあざについても、写真等の記録に残しておきましょう。
写真を残しておけば、いつにどのような怪我を負ったのか、ということを客観的な証拠として残しておけます。
この怪我の写真を証拠として出せば、相手方の暴力を客観的に立証する一つの資料となるのです。
③ 録音も重要な資料です。
まさに、暴力を振るわれている時、暴言を吐かれている時の録音を残せておければ、非常に重要な証拠になります。
もちろん、暴力を振るわれたり、暴言を吐かれてから、録音をしようと動いても、それは不可能ですから、
機会をうかがって、いつでも録音をできるように準備をしておくのです。
最近の機械の技術は本当に進歩しているので、ペン型の録音機もあったりします。
どのようなものでもよいですが、録音として残せるように、事前に「その時」に備えて準備をしておくのは重要といえるでしょう。
④ 日記等も重要な資料です。
この時にこのような暴力を振るわれた。このような暴言を吐かれたという日記は、その時の詳細な記憶を残しておくものですから、裁判所も、一定の信用性をもって見てくれます。
これは、継続的に行っていることが重要です。
何かがあった場合には記憶が鮮明なうちに、必ず記憶に残しておきましょう。
(3)モラハラをされている場合
これは、離婚の立証をするに当たっては、明白に裁判所に離婚原因と訴えるには、客観的な材料が不足しがちなケースといえます。
モラハラということで、ではどういうことを言われたのか、とか、
いつ、どのようなシチュエーションで言われたのかとか、
詳細な説明が必要になります。
その意味で、やはり日記は不可欠です。
また、これも同様に、具体的にどのようなことを言われていたかを客観的に残すものは、まさに、録音ですから、
録音もいつでも残せるようにしておきましょう。
(4)性格の不一致と言われるような場合
証拠が十分に取れていない場合には、裁判所としては、「性格の不一致にとどまる」ということで、容易には離婚を認めません。
要は「離婚原因」がないと判断してしまうのです。
そうなると、別居期間が重要になってくるのですが、こうなると長期戦を覚悟しなければなりません。
よって、別居が完全に完了して、新たな証拠が取れなくなる前に、何でも良いので、少しでも「離婚原因」に資する証拠を残す努力をされることを強くおすすめいたします。
2 不貞の証拠を確保しておくこと
不貞の証拠を確保することによって、
「離婚原因」の立証に資する証拠となりますし、
「不貞行為に基づく慰謝料請求」を相手方にすることもできます。
よって、二つの意味で、不貞行為の証拠を押さえることは重要ですので、証拠確保のために、全力を尽くしていただきたいと思います。
では、不貞行為の証拠とは何か。
①まず、配偶者と不貞相手がラブホテル等に入っている写真を撮ることです(二人で同時に入っている写真を撮ることが重要です。)。
このような証拠をつかめたら、相手方(配偶者)が、「ホテルでは何もしていない。ただ、話をしていただけだ」というような反論をしたところで、その反論は認められません。
よって、ホテルに二人で入っている写真は、不貞行為の立証にあたっては、決定的といえるでしょう。
ただし、このような写真をご自身で撮るのはなかなか困難とも思われるので、その場合には、探偵等の専門家が必要になるかもしれません。
②また、相手方の携帯電話をチェックすることも有用です。
相手方の携帯電話から、勝手に第三者にメールを送ったり、LINEをしたりするのは、別のリスクがあるので避けた方が良いですが、
相手方の携帯電話の画面をそのままご自身のカメラで撮るか、あるいは、情報自体をコピーして確保しておくのがよいと思われます。
相手方が、不貞に気付かれていないと思っている場合には、脇が甘く、不用意に携帯電話等に不貞相手とのツーショットや、場合によっては、行為をしている時の様子を写真や動画に残しておくこともあります。
不快かとは思いますが、これらの証拠を確保しておくと、後々大きな武器になりますので、大事に確保しておくことをお勧めいたします。
③その意味では、相手方のLINEやメールでの不貞相手とのやり取りも重要な証拠になる可能性があります。
これも、ご自身にバレていないと思っている場合には、そのままLINE上の会話を残していることもありますから、具体的に不貞をうかがわせるやり取りがあった場合には、携帯の画面を写真等に残すことで、証拠化することも有用でしょう。
④SuicaやPASMO(関東県外の方は、それに該当するもの)の、利用履歴をとることも有用です。
これは二つの意味があって、
一つは、定期的に不貞相手の家等に言っている場合、不貞相手の家を特定できれば、そこに定期的に通っていたということの間接的な証拠になります。
二つは、この履歴によって、行動パターンが読めるので、将来的に不貞の決定的な証拠を押さえられる可能性が高まるのです。
これらSuicaやPASMOの利用履歴は、駅の自動券売機のメニューの中から発行できますので、頃合いを見計らって記録を取るのは有用といえるでしょう。
⑤自家用車がある場合、自家用車に録音機を残しておくことも一つの手段です。
ここで、相手方(配偶者)と不貞相手が会話しているところをおさえられた場合には、これも証拠になるでしょう。
以上のように、不貞をうかがわせる証拠というのは色々とありますし、これらの証拠を積み重ねて不貞の事実を立証していくので、証拠は多くあることに越したことはありません。
よって、相手方が不貞をしているとの確信がある場合には、色々と工夫をして、証拠を残す努力をされると良いと思います。
3 配偶者の財産状況を出来る限り調査しておくこと
配偶者の財産状況を調査することは、
①財産分与の交渉をする際に重要になること
に加え、
②婚姻費用や養育費の交渉をする際にも重要になります。
それぞれご説明いたします。
(1)財産分与の交渉の際に重要となる視点から
財産分与とは、ざっくり申し上げると、
結婚してから離婚するまでに増えた財産を夫婦で等分に分けるという制度のたてつけです。
しかし、配偶者が自己の財産をすべて自分に開示してくれているかというと、そうではないケースが多分にございます。
そのため、同居中に、配偶者の財産を把握できる資料を、写真等でできるだけ押さえておく必要があるでしょう。
代表的な例は、
不動産の登記等の権利関係
預金通帳
株、証券
生命保険
となるでしょうか。
隠している預金等はいくらでも想像し得ますので、別居が始まって、調査ができなくなる前に、できるだけの調査をするのが望ましいといえるでしょう。
(2)養育費や婚姻費用の交渉の際に必要となるという視点から
この視点は、相手方がどれだけの収入があるかという視点になります。
当然ですが、相手方の収入が高ければ高いほど、養育費や婚姻費用を多くもらえることになります。
離婚調停になって、婚姻費用分担調停等を行えば、相手方がサラリーマンであれば、源泉徴収票等を出してもらえば、それで年収がわかりますし、あまり隠せる要素はありません(とはいえ、源泉徴収票がもし発見出来たら写真等に残しておきましょう。)。
むしろ、配偶者が副業等をしていて、源泉徴収票を貰っているのとは別に、確定申告をしているような場合には、確定申告の書類等を確保しなければなりません。
この場合には、相手方が源泉徴収票だけ出して、収入を過度に小さく見せようとしたりするので、同居中にできるだけ確定申告の資料も確保できるのが望ましいといえます。
また、相手方が事業を経営している場合には、会社にお金を残し、自分の給与をかなり圧縮することで、不当に収入を小さく見せようとすることもあります(特に、一人会社とか小規模でやっている場合には注意が必要です。)。
その場合には、個人としての確定申告に加えて、会社としての確定申告も確保できると望ましいといえるでしょう。
4 別居後の生活場所を確保しておくこと
別居を結構する前には、当然別居後の生活場所を確保しておく必要があります。
別居先の住所を知られたくないのであれば、秘密裏に不動産を探しておく必要がありますし、
また、転居先の住民票も追いかけられない様に注意をする必要があります。
これは、別居が出来た後の話ですが、
(非常に面倒ですが)その際、市区町村の役所に行って、住民票の情報を秘匿にしたいという相談をする必要があります。
色々と聞かれますし、かなり大変ですが、身を守る為に必要であれば、頑張って乗り切る必要があります。
別居先が実家のこともあるでしょう。
その場合には、事前に別居を考えている旨を実家のご両親とも相談をしておく必要はあるでしょう。
5 (両親等)身内の方に事前に相談しておくこと
その意味で、別居を決行する前に、身内の方に相談をしておくことは不可欠です。
場合によっては、時間が切迫する中で、別居を決行しなければならないこともあり得ます。
たくさんの荷物を短時間で運ばなければならない状況になることもあり得ます。
その際に、いつでも応援にきてもらえるように、身内の方には準備をしていただく必要があると思います。
6 重要な荷物は全て持っていけるようまとめておくこと
離婚のご相談を受けていて、
「荷物の運びだし」というのが重要なテーマになることが度々あります。
それは、重要なものも何も持っていくことができず、着の身着のままで逃げてきたとか、戻ることができず、そのまま実家にいたとか、
ケースによっては様々です。
この場合、相手方は、すでに別居状況になっており、かなり対立関係になっていることが多いです。
その際、「荷物の運び出し」の交渉をすることは容易ではありません。
そもそも、家に入れないとか、かなり強硬な対応をされることもままあります。
そのため、別居をする際には、重要なものは全て持っていけるように重要なものはまとめておいてください。
仮に着の身着のままで別居をすることになったとしても、
ご自身の健康保険証とか、運転免許証とか、保険の資料とか、通帳とか、マイナンバーとか、そういう重要なものは、代えがききません。
それらがないと、別居後の生活に多大な支障をきたすことになるので、必ず確保する必要があります。
お子さんが学校に通っている場合には、学校用具や教材も必須です。
これらも、ないと本当に困りますから、別居の前にはお子さんに説明をして、すぐに動けるように十分な準備をする必要があるでしょう。
以上、別居前に準備して頂きたい6つのことをご説明したしました。
別居というのは、やはり大きな節目になりますから、別居前には周到な準備が必要となります。
また、別居をしてしまったら後戻りはできないですから、後悔のないように、やるだけのことをやったと思えるように、準備をしていただければと存じます。
何かご不明点、心配な点があれば、遠慮なくご相談ください。
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弁護士 山田 雄太
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