示談はなぜ必要か(不起訴・起訴猶予を取る)~刑事事件~

 

弁護士の山田雄太です。

 

犯罪行為がなされた場合、多くは、「加害者」と「被害者」が生じることになります。
(例えば、窃盗、器物損壊、暴行等)

(もちろん被害者のない犯罪もあります。)

そうなると、犯罪行為をなしてしまった方(便宜的に、以下「被疑者」と言います。)の刑事処分を(第一次的に起訴、不起訴の判断をする)検察官が決めるにあたっては、「被害者」の方の意思は極めて重要となります。

つまり、

被害者の方が、「厳罰処分を希望する」との意思を表明しているか、あるいは、「寛大な処分をして欲しい」とか「許す」という意思を表明しているかによって、被疑者の処分の重さが大きく変わってくるのです。

その意味で、弁護士の立場としては、被疑者の方への処分を少しでも軽くするために、被害者の方との「示談」を試みる、というのは極めて重要なミッションとなるわけです。

今回は、起訴猶予を取るための弁護士の活動として、「示談」について述べていきたいと思います。

 

目次

1 そもそも刑事処分の重さはどういう要素によって決まるか

2 示談ができるかは刑事処分の重さに影響する

3 示談が取れれば起訴猶予の可能性が高まる

4 示談をそもそも観念し得ない犯罪類型もある

5 示談が取れなくても起訴猶予になることもある

6 万が一前科がついたとしても周囲に知れ渡ることは少ない

7 おわりに

 

では、本編です。

1 そもそも刑事処分の重さはどういう要素によって決まるか

被疑者への刑事処分を決めるにあたっては、行った犯罪行為の重さ(これが第一義的に判断されますが)、被害回復が済んでいるか、被害者感情、前科・前歴の有無等を総合的に考慮することになります(犯罪行為をやったことに争いがない前提で書きます。)。

より具体的に言えば、

①犯罪行為自体の罪の重さ(統計データがあるので、それが判断の基礎事情になります)

②偶発的な犯行か、計画的な犯行か(偶発的な犯行の方が軽くなります)

③被害が回復されているか(主に窃盗や詐欺などの財産犯について、被害弁償がなされているか等です)

④被害感情(厳罰を希望しているより、寛大な処分を求めている方が、軽くなります)

⑤前科前歴の有無(前科や前歴がないほうが軽くなります)

⑥反省の有無(法律用語では「改しゅんの情」と言います。反省が見られるほうが軽くなります)

⑦被疑者に定職があるか

⑧配偶者や親族等の今後の監督があるか

(⑦と⑧は、起訴か起訴猶予かを決める際、①~⑥によっても判断が微妙なときには、定職があったり今後の監督があるほうが不起訴の判断に傾くことがあります)

となります。

判断の大前提として、①「犯罪行為の重さ」が大前提です。

検察庁には、膨大な同種の犯罪行為についての処罰データがありますので、検察官は同種の犯行においてどのような刑罰が科されているかによって、起訴をするか起訴猶予にするか、あるいは、起訴をするとして裁判官への求刑をどうするかの目安を立てます。

その上で、

②~⑥の事情を総合的に考えて、最終的な刑事処分を決めることになります。

⑦と⑧について補足すると、

検察官は、起訴猶予をするか否かの判断に迷ったときに、被疑者が定職についていることや、配偶者や親族等の監督があること、という事情を最後の一押しとして、 不起訴の判断をすることがあります。

弁護人の立場としては、①~⑧の全ての事情について、検察官に働きかけをして、できる限り被疑者の不起訴をとる、あるいは、起訴をされるとしても求刑を低くするための活動をすることになります。

 

2 示談は処分の重さに影響する

「示談」というのは、上記でいうと、

③被害が回復されているか(主に窃盗や詐欺などの財産犯について、被害弁償がなされているか等です)

④被害感情(厳罰を希望しているより、寛大な処分を求めているほうが、軽くなります)

の2つの事情において大きく関わることになります。

すなわち、弁護士としては、被害者の方に会いに行って、被疑者の行った行為を謝罪した上、示談金を持参し、そして、示談書への署名をお願いすることになります。

示談金は、③「被害が回復されているか」との判断に密接に関わります。

窃盗や詐欺による財産犯の場合には、被害金額が基本的に明確ですから、できるだけ被害金額に近づくように(あるいは、これに謝罪の意を込めて上乗せして)示談金を持参することになりますし、

暴行や傷害となると、実際の治療代や被害感情への慰謝の意味合いも込めて、示談金を持参することになりますが、障害等で、後遺症や痕が残るようですと、高額な示談金が必要になることもあります。

弁護士としては、何とか示談金を被害者の方に受け取っていただいて、被害回復(③)の要素をクリアしようと活動します。

もう一つが、示談書への署名をお願いすること(④)です。

弁護士がつくる多くの示談書には、示談金を受け取ったうえで、「被疑者を許します」とか、「宥恕(許すという意味)します」とか、「寛大な処分を求めます」という内容を書いています。

弁護士としては、示談金を受け取って頂くかわりに、示談書の署名をお願いすることになります。

ここで、弁護士としては、被疑者にかわり精一杯の謝罪をして、

なんとか、被害者の方に示談書に署名をしていただくようお願いすることになります。

被害者の方としては、当然、示談書に署名をするということは、「被害者を許す」とか、「寛大な処分を求める」とかの意思を表明することになるので、抵抗感を感じることが多いですが、

弁護士としては、ここはひたすら誠心誠意お願いをするということになります。

示談をするというのは、その意味では弁護士の腕の見せ所の一つともいえるでしょう。

 

3 示談が取れれば起訴猶予の可能性が高まる

検察官に起訴されてしまうか、あるいは、起訴猶予処分をいただけるかは、「示談」というのは一つの大きな要素となります。

特に、起訴か起訴猶予かが微妙な場合には、「示談」の有無が大きな要素になるでしょう。

そのため、弁護士としては、被疑者になってしまった方やそのご家族には、示談金をケチることは絶対に勧めません。

やってしまったものはどうしても取り返せないですから、

将来、最善の途(みち)に進むためにどうするか、ということを第一に考えなければならないわけです。

その意味では、示談金は精一杯、できる限りのお金を用意して頂いて、

その上で、弁護士としても示談ができるよう最大の努力をするということが、不起訴(起訴猶予)処分をいただくために何よりも重要だということになります。

 

4 示談をそもそも観念し得ない犯罪類型もある

とはいえ、示談をそもそも考える余地のない犯罪類型もあります。

公務執行妨害とか、覚せい剤取締法違反等がその典型です。

公務執行妨害は、警察官等が被害者になりそうとも思われますが、公の職務に対する犯罪ですから、被害者は存在せず、示談を考える余地はありません。

覚せい剤取締法違反も、覚せい剤を使うこと自体が犯罪行為ですので、被害者自体は存在しないことになります。

このような犯罪類型の場合には、弁護士としては、示談を前提とする③「被害回復」や④「被害感情」以外の要素で、被疑者の刑事処罰をできる限り軽くするための活動をすることになります。

 

5 示談が取れなくても起訴猶予になることもある

もちろん、示談が取れないこともあります。

例えば、大手スーパーにおいて万引きを繰り返してしまっているケースでは、

会社全体の立場として、「どうあっても示談はしない」というケースもあります。

あるいは、被害感情が非常に悪く、

弁護士がどう頑張っても示談を受け入れてくれない被害者の方もいらっしゃいます。

その場合には、弁護士としては非常に弁護活動として困難な状況に陥ることになりますが、

その場合でも、不起訴を得られることもあります。

 

多くの場合、行った犯罪行為が軽いことが大前提ですが、

上記のように万引きをして、被害者の大手スーパー等が示談を受け入れてくれない場合にいは、不起訴の可能性が残されているとも言えます(とはいえ、万引きでつかまったのが三回が限度で、それを超えると難しくなってくると思いますが)。

この場合、上記大手スーパーに被疑者の反省文を送らせてもらい、その反省文を受け取っていただいたという報告を検察庁にすることもあります(示談ができなからといって何もやらないよりは、数倍よいです。)。

しかし、やはり「示談」ができるのが何よりも重要です。

そのため、弁護士としては、「示談」をするために最大の努力をすることになります。

 

6 万が一前科がついたとしても周囲に知れ渡ることは少ない

検察官がそれでも起訴をするということになると、

犯罪行為を行ったこと自体に争いがないのであれば、

残念ながら「前科」がつくことになります。

これは、社会人にとっては大ダメージであることには変わりはありませんが、

前科がついたとしても、警察・検察・裁判書が、敢えて報道機関に被疑者の処罰の内容を伝えて、それが社会に広く伝わるようなことは基本的にはありません。

(重大犯罪が行われたときや、芸能人の犯罪はすぐに報道機関でニュースになりますが)

そのため、

万が一前科がついたとしても、

勤め先の会社に知られないことも十分にあり得ますし、

二度ともう犯罪はしないという強い意思を持って生きていっていただければ、

更生できる方が多いと思います。

 

7 おわりに

弁護士としてできること、被疑者の方の刑事処罰をできる限り軽くするために(不起訴・起訴猶予にするために)最大限に努力をするということです。

 

再犯をしてしまうかどうかというのは、最後は御本人の意思の強さにかかってきますが、

弁護士としては、御本人を励まして、社会に送り出すしかありません。

私としては、かつての被疑者の方が何か困ったことがあれば、すぐに相談して頂きたいと思いますし、

何か心が折れそうになったときに、心の支えになれる存在でありたいと思っています。

 

最後は脱線しましたが、「示談」は刑事処分の判断に極めて重要な要素です。

「示談」をとるために、被疑者ご本人も(ご家族も)、弁護士も全力を尽くすことが重要であると思います。

 

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