弁護士の山田雄太です。
今回は、離婚原因があるとは明確には言えないときの離婚協議の方法についてお伝えしたいと存じます。
離婚をしたい方にとって、配偶者に「離婚はしない」、あるいは、「離婚はしたくない」と言われるのは非常にやっかいなことです。
なぜか。
それは、離婚についての合意ができない限り、離婚を前提とした諸条件(親権、養育費、面会交流、財産分与)の話し合いに進むことができないからです。
これは、離婚原因が認められるだけの証拠を確保できている場合でも同じです。
結局、最後まで相手が離婚をしないと強固に言った場合には、最後は、離婚訴訟での裁判所の判決まで必要になるからです。
その意味では、離婚原因が認められるだけの証拠が確保できていたとしても、離婚についての合意ができることがもっとも望ましいといえます。
離婚原因が認められるとは明確に言えない場合には、なおさら、相手方が、「離婚しない」と言うことは、何としても避けたいことと言えます。
離婚原因が認められないケースの時に相手が離婚しないと言った場合、どうなるでしょうか。
それは、「離婚が認められない」ということです。
言い換えれば、調停、裁判を経ても、判決によって、「離婚が認められない」という判断が下されるということです。
そうなると、また一から(調停)訴訟を始めなければならず、本当に離婚が成立するのは、想定していたよりも、かなり遅くなってしまうということになります。
よって、ご自身の中で、離婚原因が認められるか微妙だとお考えの場合には、相手方との交渉においても、慎重に交渉をすることが望ましいといえるでしょう。
以下に、相手方の対応によって、ご自身が取るべき交渉の方法について、簡単にお伝えいたします。
目次
1 まずは離婚の合意を得る
2 相手方が離婚自体を争わない場合にどう進めるか
3 相手方が離婚自体を争ってきた場合にどうするか
4 万が一離婚原因が認められるか微妙な展開になったらどうするか
では、本編です。
1 まずは離婚の合意を得る
離婚原因が認められるか微妙な場合には、とにかく、交渉のスタートは慎重にならなければなりません。
こちらから、「離婚をしたい」と言って、その理由を説明し、関係修復は不可能だと理解させる、というのが一般的なルートといえるでしょう。
しかし、「離婚をする」ことを目標とする交渉において、先に「離婚をしたい」と言ってしまうと、なかなか交渉が簡単に進まない傾向にあるのは間違いありません。
そのため、自分からは言わず、相手から「離婚をしたい」と言わせるのが上級者と言えるでしょう。
ただし、これは本当に容易ではありませんし、離婚をするために(相手に「離婚をしたい」と言わせるために)、その後の離婚協議を不利にするような行為をすることは絶対に避けなければなりませんから(例えば、不貞をする等)、これは、もしできればするくらいのスタンスだと思います。
基本的には、「離婚をしたい」と伝えて、合意が得られれば、それでよし。
合意が得られず、らちがあかなければ、別居に踏み切るというのが、最も多いパータンではないかと思います。
とにかく、相手方に「婚姻生活の維持は不可能だ」、「既に婚姻関係は破綻している」、「配偶者の気持ちは固い」と理解させる必要があります。
ここで、「離婚したくない。考え直してほしい。」と言われて、「考えてみる。」と答えるのは絶対にあってはなりません。
毅然とした態度で、「この点についての交渉の余地はない。」、「離婚の意思は固い。」と伝え続けることが重要です。
2 相手方が離婚自体を争わない場合にどう進めるか
相手方が離婚自体は争わない場合(離婚をすることについて合意を得られている場合)、
この場合には、残るテーマである親権、婚姻費用(離婚まで)、養育費(離婚後)、面会交流のテーマに集中することができます。
これも、交渉の順序は慎重に進めた方が良いと思います。
というのは、内容によっては、交渉内容に先後関係があるからです。
例えば、養育費や面会交流については、親権をどちらにするかが決まらないと、具体的な話には進みません。
にもかかわらず、自分に親権があることを前提として、養育費をいくら欲しいとか、面会交流の頻度はこれくらいにとどめて欲しいとか、そういう要求をすると、相手の態度が硬化するリスクがあります。
そのため、早く進めたいお気持ちは理解されるところですが、
一歩ずつ、進めていくことが重要です。
まずは、離婚の合意、それから、親権の合意。
その合意ができて、初めて、養育費や面会交流の交渉を進めるべきです。
(なお、別居後の婚姻費用の話し合いは、離婚の合意の前からできますので、別居後すぐに始めても問題ないでしょう。)
しかし、任意の話し合いを続けていても、親権の合意ができないことはままあります。
その場合には、調停に進むことになるでしょう。
親権については、裁判所での調停において、一定の方向付けも期待できることになります。
すなわち、親権については、「家裁調査官」という裁判所に所属する専門家が、子供の親権をどちらの元におくべきかを判断してくれ、家裁調査官としての意見書を書いてくれます。
この意見書が、基本的には裁判官の判断の前提となるので、親権についての話し合いも、家裁調査官が意見書まで書いてくれれば、話し合いにおける大きな材料になるといえるでしょう。
また、婚姻費用、養育費、面会交流についてにも、(調停に入れば)調停委員が一定の方向付けをするよう努めてくれますし、
調停前であっても、弁護士をつければ、全て、弁護士が交渉をする範囲となります。
3 相手方が離婚自体を争ってきた場合にどうするか
相手方が離婚自体を争ってきた場合、
この場合には、離婚原因自体が問題となりますので、ご自身としては、離婚原因にあたる事実の主張をしなければなりません。
今回は、離婚原因が認められるかが微妙な(明確にない)ケースを想定しているので、なかなか悩ましいですが、
離婚原因に資する証拠はすべて出すという強い気持ちを見せて頂きたいと思います。
そのためには、LINEのやり取り、録音、写真、日記等、何でも出せるものは出せるようにしたいところです。
よって、離婚の話し合いをスタートする前には、離婚を争われた時に備えて、離婚原因に関する証拠については、何でも残しておき、記録化するようにしておくことが重要です。
このように、離婚の合意がなかなか出来ない場合には、
任意の話し合い→調停→訴訟
の展開になるでしょう。
4 万が一離婚原因が認められるか微妙な展開になったらどうするか
万が一、離婚事由がなかなか認められるか微妙な展開になった場合には、一つの選択肢として、調停において「当面別居」(同時に、相手方のほうが収入が高い場合には、定期的に婚姻費用を貰うとの合意も得ます。)ということで合意をするという手段もございます。
すなわち、現在の状況では離婚原因の立証がなかなか困難となってしまった場合には、別居期間を稼ぎ、離婚原因の一つの基礎事情に加えるということになります。
この場合には、時間はかかります(別居期間3年程は必要です)が、(相手の方が収入が高ければ)婚姻費用を貰い続けながら、別居期間を稼ぎ、時を待って、離婚を求める調停、裁判を起こすことを考えることになります。
すぐに離婚したい場合には、なかなか容易ではない選択ですが、(相手の方が収入が高ければですが)婚姻費用を定期的にもらうことができることと、別居期間が増えるごとに少しずつ離婚に近づいていくと考えることができるので、最後の選択肢としては、残しておいても良いものだと思います。
以上を踏まえ、離婚の話し合いをスタートする場合には、慎重に進めて頂ければと存じます。
何か、ご不明点やご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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