「子の氏の変更許可申立」の具体的方法~住所と本籍が異なる場合~

 

弁護士の山田雄太です。

さて、今回は、離婚が成立した後、

ご自身やお子様の姓を旧姓に戻したい時にどのような手続をするかについてご説明をしようと思います。

今回のメインテーマは、

 戸籍のご説明と、「子の氏の変更許可申立」のご説明です

特に、ご自身(及びお子様)の住民票上の住所と本籍の市区町村が異なる場合(お子様を連れてご実家に帰られているケースが多いです)には、やや面倒な手続きをする必要があるため、

その点についてもできるだけ丁寧にご説明するようにいたします。

 

目次

1 自分の姓を旧姓に戻したいとき

 お子様の姓を旧姓に戻すためにどうするか

3 戸籍の制度のご説明

4 子供の姓をそのままで旧姓になった親の新戸籍に入れることはできない

 「子の氏の変更許可申立」の具体的方法平日に裁判所に行ける場合

6 「子の氏の変更許可申立」を郵送で申し立てる方法(平日に時間が取れないとき)

 

では、本編です。

1 自分の姓を旧姓に戻したいとき

まず、前提として、

ご自身が離婚をされて、姓を旧姓に戻したい場合には、

離婚届に、「妻(夫)は旧姓に戻す」との記載がありますので、その部分の記載をしていただければそれで十分です。

 

2 お子様の姓を旧姓に戻すためにどうするか

問題は、お子様の姓を旧姓に戻すためにどうするかという点です。

お子様の親権を確保された上で、お子様もご自身と同じように旧姓に戻したい場合には、離婚届を提出するだけでは、姓を元に戻すことができません。

 お子様の姓を旧姓に戻すために必要が手続が、「子の氏の変更の申立て」となります。

・・・どうしてこのような面倒な手続きをしなければならないんだ?

とお思いのことと存じます。

しかし、制度上(システム上)は、離婚届の段階では子供の姓を自分と同じ旧姓に戻すことはできず、離婚後、「子の氏の変更の申立て」をしなければならないのはやむを得ないんですね。

 

3 戸籍の制度のご説明

この点の理解をするためには、戸籍の制度を理解する必要があります。

(1)まず、離婚をして、旧姓に戻る場合、

原則として、結婚前にいた戸籍に戻ることになります(これを、復籍と言います。)。

そのため、お子様がいない場合には、離婚届を提出して、旧姓に戻り、結婚前の戸籍に(特別の手続きなく)戻るということになるため、非常に簡単です。

 

(2)しかし、お子様がいる場合、

ご自身と子供も一緒に元々いた戸籍に戻ることはできません。

というのも、戸籍法上、

 親・子供・孫という形で三世代が同じ戸籍に同居するような記載にすることはできないからです。

 

(3)そのため、ご自身とお子様を同じ戸籍に入れるためには、

ご自身が新しい戸籍(新戸籍)を作る必要があります。

しかし、新戸籍を作るためには、離婚届の提出が前提となりますから、

離婚届を提出した上で、

新戸籍を作る必要があります。

 

(4)そのため、離婚届けを出した瞬間は、

(その後新戸籍を作って子供を迎え入れる前提だったとしても)子供が新たに入る受け皿(新戸籍)ができておらず、

どうあっても子供は、しばらくは旧戸籍(元配偶者の戸籍)に残っている必要があります(当然子供の姓も元配偶者の姓のままです。)。

 

(5)以上より、

子供を新戸籍に入れるための、離婚後の手続としては、

離婚届の提出(これにより旧姓に戻る)

新戸籍の編製の申立て(@市役所)

子供を新戸籍に入籍させるための手続

という三段構えの手続きをする必要があるのです。

 

4 子供の姓をそのままで旧姓になった親の新戸籍に入れることはできない

なお、「③子供を新戸籍に入籍させるための手続」をするにあたり、

子供を婚姻時の姓のまま、旧姓に戻った親の新戸籍に入れることができるか、というと、

それはできません。

戸籍法上、子供と親の姓(氏)が異なると、子供と親は同じ戸籍に入ることができないからです。

そこで、必要となってくるのが、

 「子の氏の変更許可申立」となるのです。

 

 「子の氏の変更許可申立」の具体的方法平日に裁判所に行ける場合

ここからが、今回の本題です。

平日に裁判所に行くことが出来る場合には即日で「子の氏の変更許可」の審判まで出ます。

一方で、平日に裁判所に行くことが出来ない方は郵送により申し立てることも可能です(その場合発送から2週間弱で審判の決定が出ます。)。

(1)確認ですが、

離婚をして、旧姓に戻られる方(かつお子様の親権を確保された方)は、基本的にご自身の親の戸籍に戻るのではなく、新たに戸籍を作る必要があります。

そして、ご自身の戸籍を作った上で、そこに、お子様の籍を入れることとなります。

 

(2)そして、離婚の話し合いが成立した段階で、

① まずは、離婚届けを住所地の市区町村に提出していただきます。

② その際、住所地で新戸籍を作成するための手続も併せて行ってください。

③ 戸籍に離婚の内容が反映されましたら、お子様の住所地を管轄する家庭裁判所(管轄は裁判所HPで調べられます)へ、「子の氏の変更許可申立」をすることとなります。

 

(3)ただし、ご自身(及びお子様)の住所と本籍の場所の市区町村が異なる場合、

子の氏の変更の申立てをするに際しては、

家庭裁判所に行く(郵送)前、

① 離婚の内容が戸籍に反映した後の、かつての本籍がある市からお子様の戸籍謄本を2通(この戸籍に元配偶者とお子様が残っており、ご自身だけ戸籍から抜けた形になっています)、を取得し、

② 住所地からご自身の戸籍謄本を1通(ここにご自身が作成した新戸籍があります。)を取得します。

 

(4)その上で、上記戸籍謄本を持参して、家庭裁判所に行きます(郵送の場合の方法は、後記「6」をご参照ください。)。

この際、認印も持参ください。

※ただし、

お子様が15歳未満であれば、お一人で申立てをすることができます

が、

お子様が15歳に至っている場合には、お子様自身も連れて行く必要がある

点についてはご注意ください。

 

(5)家庭裁判所の受付で、「子の氏の変更許可申立」をしたいというと、具体的に書くべき書式等を指示してもらえます。

また、郵券印紙等を裁判所で買うのですが、その費用として、少なくとも2000円程度はご持参いただけばと存じます。

 

(6)あとは、家庭裁判所の指示通りに動けば、家庭裁判所により、「子の氏の変更許可」を出されます。

(ここで、家庭裁判所は、住所地の戸籍謄本1通と、かつての本籍地の戸籍謄本1通を使います。)

 

(7)最後に、家庭裁判所が出した、「子の氏の変更許可」の書面と、かつての本籍地の戸籍謄本1通を、

住所地の(新戸籍を作った)市区町村に持って行って、

お子様をご自身が作った新戸籍に入籍させるための手続を取ります。

そうすると、

お子様の氏がご自身の旧姓に合わせる形で変更され、

かつ、お子様がご自身の新戸籍に入籍することになります。

 

6 「子の氏の変更許可申立」を郵送で申し立てる方法(平日に時間が取れないとき)

「子の氏の変更許可申立」については、実際に裁判所に行けば即日でできますが、

平日に行くことが難しい方(特に15歳以上のお子様を平日に裁判所に連れて行くのはなかなか難しいとも考えられます。)のために、郵送によっても行うことができます(なお、子の氏の変更許可申立に期間制限はないので、ご心配にならなくて大丈夫です)。

(1)まず、裁判所のHPから申立書をダウンロードを印刷することになりますが、

「子供が15歳未満の場合」と「子供が15歳以上の場合」の書式がありますので、それぞれの場合に分けてダウンロードして印刷し、必要事項に記載をすることになります。

「子供が15歳未満の場合」にはすべてご自身で記載できますが、

「子供が15歳以上の場合」には、お子様に直接申立書に記載してもらってください。

 

(2)必要な費用としては、

子供一人につき、収入印紙800円(収入印紙は郵便局等で入手できます。)と、

家庭裁判所からの連絡用の郵便切手を用意することになります。

なお、東京家裁(本庁)の運用では、現在、82円切手が3枚、10円切手が3枚必要です。

※別の裁判所に申立をする場合には、裁判所に、直接、必要な郵便切手を問い合わせてみてください(意外と親切に教えてくれます。)。

 

(3)以上より、必要な書類としては、

①申立書

②収入印紙800円×子供の人数

③郵便切手

④ご自身の新しい戸籍謄本 1通

⑤お子様の戸籍謄本(元配偶者のもとに残っています) 1通

となります。

 

(4)そして、(仮に)東京家庭裁判所の本庁に申し立てる場合には、

東京家庭裁判所の住所(東京都千代田区霞が関1-1-2)に、宛先「東京家庭裁判所 家事訟廷事件係 御中」と記載して郵送すれば、2週間弱で審判の決定が出ることになります。

申立書を郵送する家庭裁判所が異なる場合には、運用が異なる可能性がありますので、直接裁判所にお電話で問い合わせると良いと思います。

 

(5)子の氏の変更許可の審判が出た後の流れは、上記と同じように動いていただければ結構です。

 

以上です。

 

手続としては、非常に迂遠で面倒ですが、

一つ一つこなしていけば必ず手続は完了します。

お仕事等が忙しい場合には、専門家に頼るのもできますし、

あまり、過度に心配にならなくてもよいかと思います。

何か心配事があれば、遠慮なくご質問頂ければと存じます。

 

東京都新宿区新宿1-6-5

シガラキビル5階

山田法律事務所(03-5379-0655)

弁護士 山田 雄太

(090-8490-5089)

 

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