キャバクラ・ホストでぼったくり!弁護士の交渉法とは?

 

弁護士の山田雄太です。  

 

私の事務所は、「新宿歌舞伎町」に近いこともあって、キャバクラ・ホスト等の飲食代金に関するトラブルについてご相談を受けることがございます。

そのため、今回は、 キャバクラ・ホストでぼったくり被害を受けたとのご相談を受けたときに、弁護士としてどのように対処・交渉をするか

について述べたいと思います。

 

目次

1 安易にお金を払ってはいけない(大前提)

2 トラブルを家族に知られたくない場合

3 払ってしまったお金を取り返す交渉・訴訟

4 払うべきお金を減額する交渉・訴訟

5 ぼったくり店に対する弁護士の主張として考えられるもの

(1)風営法違反

(2)条例違反

(3)クレジットカード規約違反

6 おわりに

 

では、本編です。

1 安易にお金を払ってはいけない(大前提)

ぼったくり店との間でトラブルが始まるのは、

ぼったくり店から飲食代金の請求をされたときです。

そのときに、びっくりするくらい高額の請求をされ、

お客の立場としては、泣く泣く払うか、

こんな高額の飲食はしていないと頑張るか、

選択を迫られることになります。

このとき、安易にお金を払ってはいけません。

弁護士の立場からすれば、

払ってしまった後で取り返そうとするのと、

払わずに頑張ってその後に減額交渉をするのとでは、

圧倒的に、払わずにその後減額交渉をするほうが交渉しやすいと言えます。

一回払ってしまったものを取り返すには、

任意にお店側が払ってくれない場合には、

訴訟提起をし、

判決をもらい、

それでも払ってくれなければ、

強制執行(預金への差押え等)をしなければなりません。

その手間を考えると、

辛いけれども、頑張ってその場では払わずに、なんとか帰り、

後日、払うべきお金の減額交渉するべきということになります。

 

2 トラブルを家族に知られたくない場合

先ほど、ぼったくり店から高額な請求をされたとしても、

なんとかその場では払わずに帰り、

その後、減額交渉をするべきと申し上げました。

しかし、帰ろうとする際

多くの場合、電話番号だけでなく、住所を教えるよう

強く要求されると思われます。

そして、住所を教えなければ返さないというスタンスを取るでしょう。

これは、ある意味考えられるところでお店側からしたら、逃げられたときに追いかける方法(最後は訴訟等)がないのは困るということでしょう。

そして、要求されたとき、警察に一緒に行くこともあり得ますが、

警察も「民事不介入」だから自分たちで話をつけてということも多く、

結局、住所を教えない限り、なかなか変えることができません。

しかし、その際、ご家庭がある方など、住所を教えることに強い抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。

そのようなときに、弁護士を呼び、

その弁護士と委任契約を結べば、

弁護士がその方の代理人となって、

お店側との全ての交渉をやってくれます。

そして、その際、重要なのは、お店に自分の住所を伝えることなく、

弁護士にすべて託したということで帰ることができるということが大きなポイントとなります。

その後は、弁護士がすべて窓口となって、お店との間で交渉を始めてくれることになります。

 

3 払ってしまったお金を取り返す交渉・訴訟

払ってしまったお金を取り返すには、まずは、交渉です。

交渉によって、任意に払ってもらえない場合には、

訴訟をするしかありません。

その場合、

ぼったくり、つまり金銭を支払ってもらう理由がないのに過大な金銭の支払を受けたということを理由とするので、

不当利得返還請求

もしくは、

不法行為に基づく損害賠償請求

をすることになります。

そして、訴訟を少なくとも半年から1年ほど行って、

判決をもらい、

それでも任意に払ってくれなければ、

そのお店の財産を調査して、

(弁護士法の23条照会等により調査を行います。)

強制執行を行うことになります。

 

はっきり申し上げて、

かなり時間も労力もかかるので、

ここまでして取り返そうと頑張ってくれる方は多くはないと言えるでしょう。

 

4 払うべきお金を減額する交渉・訴訟

逆に、なんとかその場でぼったくり店に対してお金を払わずに、

その後に交渉するということで帰ってくることができれば、

弁護士としては、そのお店との間で、

支払うべきお金を減額する交渉を行うことになります。

そして、私の感覚では、

訴訟にならず、交渉で無事に解決する可能性がそれなりに高いといえます。

なぜなら、

お店としても、通常よりかなり高く請求しているという自覚がありますし、

ここで、過度に争ってしまうことで、

むしろお店の評判が下がったり、

営業そのものに影響が生じてしまうことを恐れるからです。

そのため、弁護士が減額の交渉をした場合、

多くの場合(一切支払わないと言うことは当然できませんが)、

払うべきお金を決めて、

和解契約書により、

これで終わり、その後はお互い何も言いませんよ、

という内容の「清算条項」を入れて解決することができると考えられます。

 

5 ぼったくり店に対する弁護士の主張として考えられるもの

(1)飲食をしていないものについて伝票に記載されていること

基本的に、お店側は、伝票に記載されている内容をもって、

飲食代金の請求をしてきます。

その伝票に記載されている内容が、

自分も飲食しておらず、

かつ、

自分についた女性(男性)も飲食していないものであった場合、

当然、支払うべき義務がありません。

 

(2)メニュー表が一切提示されていなかったこと

メニュー表が一切提示されず、飲食を提供されていた場合、

実は、お店側に重大な問題があることになります。

・風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)、

・風営法を受けた国家公安員会規則

・条例は、

メニュー表が示されなかったことによる料金トラブルを防ぐため、

風俗営業店(キャバクラ、ホスト等は当然これにあたります)に対し、

お客に料金表の提示を遵守事項として定めています。

メニュー表が示されなかったという事実を示し、

お店側に、風営法違反ですよ等と言うことは、

お店側にはかなりのインパクトがあります。

それは、風営法違反となると、営業停止の処分につながりかねないため、

そのような指摘を受けることは、

お店としては何よりも避けたいからです。

(逆に言えば、風俗営業店を運営している方は、是非、料金表をお客様にご提示して頂きたいと思います。)

 

(3)無理やりクレジットカードの決済をされそうになったこと

無理やりクレジットカードの決済をされそうになった場合、

大きく二つの問題があります。

第一に、

風営法や条例に反する「料金の取り立て行為」となることです。

このような行為は、厳格に風営法や条例により禁じられており、

これに違反すると、

営業停止につながったり、

刑事罰の対象になったりします。

そのため、無理やり支払わされそうになった場合には、このことは必ず主張するべき内容になります。

 

第二に、

無理やりクレジットカードの決済をされそうになったことは、

そのお店が「クレジットカード規約」に違反したことになります。

これは、

クレジットカード会社が、無理やり払わせようとしてはいけないとの内容を、

「クレジットカード規約」という形で文言化しているものです。

(すべては調べていませんが、全てのクレジットカード会社が禁止していると思います)

そして、無理やり払わせようとしたという行為は、

違反の程度としても重いため、

契約解除事由にもあたることが多いと言えます。

よって、このような無理やり払わせようとするような行為があった場合には、

クレジットカード規約の違反もそのお店に指摘することになります。

 

6 おわりに

以上、色々と述べましたが、

ぼったくり店からあまりに過大な料金支払の請求があった場合、

その場ではなんとか支払わずに、

警察署に一緒に行く等して、

電話番号等の連絡先を交換して帰り、

電話番号の交換だけではなく住所を示すことを強く求められて帰れない場合、

弁護士を呼んで自分の代わりに連絡先の交換をしてもらい、

その弁護士を代理人として上記のような交渉する

というのがもっとの望ましい流れと言えます。

 

そして、何よりも重要なことは、

絶対にこんな支払請求をされるのはおかしいと思ったら、

なんとか頑張ってその場では支払わずに、

その後に交渉するという形にもっていくということです。

ぼったくり店に遭遇してしまった場合、

精神的には辛いと思いますが、

何とか頑張って帰るなり、弁護士に連絡して頂ければと思います。

 

※ あわせて読みたい記事

キャバクラ・ホストでぼったくり!どう身を守るか?

 

山田法律事務所 弁護士 山田雄太

TEL 03-5379-0655

(090-8490-5089)

東京都新宿区新宿1-6-5 シガラキビル5階(丸の内線 新宿御苑前駅1分)

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キャバクラ・ホストでぼったくり!どう身を守るか?

 

弁護士の山田雄太です。

 

私の事務所は、「新宿歌舞伎町」に近いこともあって、キャバクラ・ホスト等の飲食代金に関するトラブルについてご相談を受けることがございます。

要は、自分の認識よりも極めて高いお金を請求された(ぼったくり被害にあった)との相談を受けることがあります。

そのため、今回は、

キャバクラ・ホストでぼったくり被害を受けたとき、自分の身を守るためにどうすべきか?

について述べたいと思います。

 

目次

1 ぼったくり店の特徴

2 安易にお金を払ってはいけない

3 録音に残す

4 警察(交番)に行く

5 連絡先を交換して帰宅する努力をする

6 帰宅できなければ弁護士を呼ぶ

 

では、本編です。

1 ぼったくり店の特徴

まず、大前提ですが、

ぼったくり店に行かないで済むのであれば行かない方が良いに決まっています。

そのため、ぼったくりの被害に遭ってしまった場合の対応策を述べる前に、裁判例からうかがえるぼったくり店の特徴を述べたいと思います。

ぼったくり店の特徴は、第1に、

①キャッチがしつこく、ことさらに安い値段を提示してくる

ことが挙げられます。

「1時間4000円ぽっきりですよ」など言って店に連れて行こうとするキャッチがいる場合には要注意です。

第2に、

②料金表をお客に見せない

ことも挙げられます。

ぼったくり店は、お客に料金表を見せず、好きなだけ飲ませ、

(※少なくとも新宿歌舞伎町においてはお客に料金表を見せないのは法令違反です。)

お金を請求する段階になって、

お客が素直に払わなかった場合、料金表を出してくることが多いです。

そのため、入店したお店に料金表が見える場所に置かれていない場合には、

要注意です。

第3に、

③インターネット上(口コミ)の評価が悪い

ことも挙げられます。

ぼったくり店は、当然トラブルになっていることも多く、

その場合、過去の被害者の方がインターネット上にそのお店の悪い評判を書いていることもあります。

そのため、事前に、行く店の評判を見ておくことが望ましいでしょう。

 

2 安易にお金を払ってはいけない

実際にお店に入り、飲食をした後、

不運にも、お店から考えられないほどの高額な請求をされたとします。

このとき、安易にお金を払ってはいけません。

払ってしまった後で、取り返すのは本当に大変です。

(弁護士としては、その場では払わず、その後、払うべき額を少なくするよう交渉する方が、よっぽど戦いやすいです。)

また、ぼったくり店は、手持ちの現金がなければクレジットで決済をするよう要求してきます。

しかし、同様に、クレジットカードも安易に渡してはいけません。

当然、サインをしなければ最後の防御はできますが、お店側が勝手にサインをするリスク(もちろんこれをしたら犯罪ですが)まで考えると、

クレジットカード自体を渡すことも避けるべきです。

 

3 録音に残す

トラブルになると、ぼったくり店の場合は、

声を荒げたりしてお客を萎縮させ、

その場で何とか払わせようとすることが多くあります。

その際、隠れて録音をすることができれば、大きな交渉の材料となります。

(あるいは最悪裁判になったとしても大きな証拠となります。)

怖いと思いますが、トラブルになって口論が始まってしまったら、

何とか録音により記録に残しておきましょう。

 

4 警察(交番)に行く

最寄の警察(交番)に行ってしまえば、ぼったくり店も無茶はできません。

そのため、トラブルになった場合には、

「警察に一緒に行って話し合いをしましょう。」

と店員に言うことは有用な手段です。

もちろん、警察は、犯罪が起こっていないと判断すると、

「民事不介入だ。」

としか言わず、どちらの肩入れもしてくれません。

しかし、警察(交番)に行くだけで、最低限の身の安全は確保できるといえるでしょう。

なお、警察(交番)に行かせようとしない場合には、「110番通報をする。」とお店側に伝えてもよいと思います。

 

5 連絡先を交換して帰る努力をする

ぼったくり店としては、なんとかその場でお金を払わせようとします。

しかし、事後の交渉となると、無理な要求をすると自分達の立場が危うくなると言うことを理解しているため(当然風営法上の規制や条例がお店側の頭にちらつくことになります)、

まともな交渉になる可能性が高くなります。

そのため、なんとか連絡先を交換して、帰る努力をしてください。

ベストは電話番号だけの交換で帰ってくることですが、

おそらく、店側は

「そうやって逃げられるのは困る。」など言って、

住所まで言わなければ帰さないと強く言ってくるでしょう。

住所を伝えるか否かについては、それぞれの方の価値判断ですが、

家族がいらっしゃる方は、住所を伝えることについては、かなり抵抗があるかと思います。

その場合、どうしても住所を伝えることが出来ないと考えるのであれば、最後は弁護士を呼ぶしかないと思います。

 

6 帰れなければ弁護士を呼ぶ

弁護士を呼ぶのは最後の手段です。

でも、住所を伝えずに帰りたい方や、

どうしてもお店の店員が怖くて自分では対応するのが難しい方

にとっては、大きな力になると思います。

弁護士を呼ぶとすれば、

まずは交番(警察署)にお店の人と行って、

連絡先を交換して帰る努力をし、

帰ることができなければ、弁護士に交番に来てもらうと言うことになるでしょうか。

その場合には、弁護士が交番に駆け付ける場合には、

その交番で、対お店の飲食代金についての交渉を弁護士に依頼すれば、

その後の対応は、全て弁護士がやってくれます。

弁護士が代理人としてつけば(当然弁護士は自分の名刺をお店に渡します。)、

お店側もその後は弁護士を相手に交渉しなければならないということを理解しますし、

(ましてや交番では、それ以上無茶な主張はしにくくなります。)

自分の住所等の連絡先を伝えずに帰宅することができるというのは大きなメリットではないかと思います。

もちろん、弁護士を呼ぶとなると費用はかかりますし、呼ばないで済むのであればそれがベストではありますが、

窮地に陥ってしまった場合には、弁護士を呼ぶことも考えて頂ければと思います。

 

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山田法律事務所 弁護士 山田雄太

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示談はなぜ必要か(不起訴・起訴猶予を取る)~刑事事件~

 

弁護士の山田雄太です。

 

犯罪行為がなされた場合、多くは、「加害者」と「被害者」が生じることになります。
(例えば、窃盗、器物損壊、暴行等)

(もちろん被害者のない犯罪もあります。)

そうなると、犯罪行為をなしてしまった方(便宜的に、以下「被疑者」と言います。)の刑事処分を(第一次的に起訴、不起訴の判断をする)検察官が決めるにあたっては、「被害者」の方の意思は極めて重要となります。

つまり、

被害者の方が、「厳罰処分を希望する」との意思を表明しているか、あるいは、「寛大な処分をして欲しい」とか「許す」という意思を表明しているかによって、被疑者の処分の重さが大きく変わってくるのです。

その意味で、弁護士の立場としては、被疑者の方への処分を少しでも軽くするために、被害者の方との「示談」を試みる、というのは極めて重要なミッションとなるわけです。

今回は、起訴猶予を取るための弁護士の活動として、「示談」について述べていきたいと思います。

 

目次

1 そもそも刑事処分の重さはどういう要素によって決まるか

2 示談ができるかは刑事処分の重さに影響する

3 示談が取れれば起訴猶予の可能性が高まる

4 示談をそもそも観念し得ない犯罪類型もある

5 示談が取れなくても起訴猶予になることもある

6 万が一前科がついたとしても周囲に知れ渡ることは少ない

7 おわりに

 

では、本編です。

1 そもそも刑事処分の重さはどういう要素によって決まるか

被疑者への刑事処分を決めるにあたっては、行った犯罪行為の重さ(これが第一義的に判断されますが)、被害回復が済んでいるか、被害者感情、前科・前歴の有無等を総合的に考慮することになります(犯罪行為をやったことに争いがない前提で書きます。)。

より具体的に言えば、

①犯罪行為自体の罪の重さ(統計データがあるので、それが判断の基礎事情になります)

②偶発的な犯行か、計画的な犯行か(偶発的な犯行の方が軽くなります)

③被害が回復されているか(主に窃盗や詐欺などの財産犯について、被害弁償がなされているか等です)

④被害感情(厳罰を希望しているより、寛大な処分を求めている方が、軽くなります)

⑤前科前歴の有無(前科や前歴がないほうが軽くなります)

⑥反省の有無(法律用語では「改しゅんの情」と言います。反省が見られるほうが軽くなります)

⑦被疑者に定職があるか

⑧配偶者や親族等の今後の監督があるか

(⑦と⑧は、起訴か起訴猶予かを決める際、①~⑥によっても判断が微妙なときには、定職があったり今後の監督があるほうが不起訴の判断に傾くことがあります)

となります。

判断の大前提として、①「犯罪行為の重さ」が大前提です。

検察庁には、膨大な同種の犯罪行為についての処罰データがありますので、検察官は同種の犯行においてどのような刑罰が科されているかによって、起訴をするか起訴猶予にするか、あるいは、起訴をするとして裁判官への求刑をどうするかの目安を立てます。

その上で、

②~⑥の事情を総合的に考えて、最終的な刑事処分を決めることになります。

⑦と⑧について補足すると、

検察官は、起訴猶予をするか否かの判断に迷ったときに、被疑者が定職についていることや、配偶者や親族等の監督があること、という事情を最後の一押しとして、 不起訴の判断をすることがあります。

弁護人の立場としては、①~⑧の全ての事情について、検察官に働きかけをして、できる限り被疑者の不起訴をとる、あるいは、起訴をされるとしても求刑を低くするための活動をすることになります。

 

2 示談は処分の重さに影響する

「示談」というのは、上記でいうと、

③被害が回復されているか(主に窃盗や詐欺などの財産犯について、被害弁償がなされているか等です)

④被害感情(厳罰を希望しているより、寛大な処分を求めているほうが、軽くなります)

の2つの事情において大きく関わることになります。

すなわち、弁護士としては、被害者の方に会いに行って、被疑者の行った行為を謝罪した上、示談金を持参し、そして、示談書への署名をお願いすることになります。

示談金は、③「被害が回復されているか」との判断に密接に関わります。

窃盗や詐欺による財産犯の場合には、被害金額が基本的に明確ですから、できるだけ被害金額に近づくように(あるいは、これに謝罪の意を込めて上乗せして)示談金を持参することになりますし、

暴行や傷害となると、実際の治療代や被害感情への慰謝の意味合いも込めて、示談金を持参することになりますが、障害等で、後遺症や痕が残るようですと、高額な示談金が必要になることもあります。

弁護士としては、何とか示談金を被害者の方に受け取っていただいて、被害回復(③)の要素をクリアしようと活動します。

もう一つが、示談書への署名をお願いすること(④)です。

弁護士がつくる多くの示談書には、示談金を受け取ったうえで、「被疑者を許します」とか、「宥恕(許すという意味)します」とか、「寛大な処分を求めます」という内容を書いています。

弁護士としては、示談金を受け取って頂くかわりに、示談書の署名をお願いすることになります。

ここで、弁護士としては、被疑者にかわり精一杯の謝罪をして、

なんとか、被害者の方に示談書に署名をしていただくようお願いすることになります。

被害者の方としては、当然、示談書に署名をするということは、「被害者を許す」とか、「寛大な処分を求める」とかの意思を表明することになるので、抵抗感を感じることが多いですが、

弁護士としては、ここはひたすら誠心誠意お願いをするということになります。

示談をするというのは、その意味では弁護士の腕の見せ所の一つともいえるでしょう。

 

3 示談が取れれば起訴猶予の可能性が高まる

検察官に起訴されてしまうか、あるいは、起訴猶予処分をいただけるかは、「示談」というのは一つの大きな要素となります。

特に、起訴か起訴猶予かが微妙な場合には、「示談」の有無が大きな要素になるでしょう。

そのため、弁護士としては、被疑者になってしまった方やそのご家族には、示談金をケチることは絶対に勧めません。

やってしまったものはどうしても取り返せないですから、

将来、最善の途(みち)に進むためにどうするか、ということを第一に考えなければならないわけです。

その意味では、示談金は精一杯、できる限りのお金を用意して頂いて、

その上で、弁護士としても示談ができるよう最大の努力をするということが、不起訴(起訴猶予)処分をいただくために何よりも重要だということになります。

 

4 示談をそもそも観念し得ない犯罪類型もある

とはいえ、示談をそもそも考える余地のない犯罪類型もあります。

公務執行妨害とか、覚せい剤取締法違反等がその典型です。

公務執行妨害は、警察官等が被害者になりそうとも思われますが、公の職務に対する犯罪ですから、被害者は存在せず、示談を考える余地はありません。

覚せい剤取締法違反も、覚せい剤を使うこと自体が犯罪行為ですので、被害者自体は存在しないことになります。

このような犯罪類型の場合には、弁護士としては、示談を前提とする③「被害回復」や④「被害感情」以外の要素で、被疑者の刑事処罰をできる限り軽くするための活動をすることになります。

 

5 示談が取れなくても起訴猶予になることもある

もちろん、示談が取れないこともあります。

例えば、大手スーパーにおいて万引きを繰り返してしまっているケースでは、

会社全体の立場として、「どうあっても示談はしない」というケースもあります。

あるいは、被害感情が非常に悪く、

弁護士がどう頑張っても示談を受け入れてくれない被害者の方もいらっしゃいます。

その場合には、弁護士としては非常に弁護活動として困難な状況に陥ることになりますが、

その場合でも、不起訴を得られることもあります。

 

多くの場合、行った犯罪行為が軽いことが大前提ですが、

上記のように万引きをして、被害者の大手スーパー等が示談を受け入れてくれない場合にいは、不起訴の可能性が残されているとも言えます(とはいえ、万引きでつかまったのが三回が限度で、それを超えると難しくなってくると思いますが)。

この場合、上記大手スーパーに被疑者の反省文を送らせてもらい、その反省文を受け取っていただいたという報告を検察庁にすることもあります(示談ができなからといって何もやらないよりは、数倍よいです。)。

しかし、やはり「示談」ができるのが何よりも重要です。

そのため、弁護士としては、「示談」をするために最大の努力をすることになります。

 

6 万が一前科がついたとしても周囲に知れ渡ることは少ない

検察官がそれでも起訴をするということになると、

犯罪行為を行ったこと自体に争いがないのであれば、

残念ながら「前科」がつくことになります。

これは、社会人にとっては大ダメージであることには変わりはありませんが、

前科がついたとしても、警察・検察・裁判書が、敢えて報道機関に被疑者の処罰の内容を伝えて、それが社会に広く伝わるようなことは基本的にはありません。

(重大犯罪が行われたときや、芸能人の犯罪はすぐに報道機関でニュースになりますが)

そのため、

万が一前科がついたとしても、

勤め先の会社に知られないことも十分にあり得ますし、

二度ともう犯罪はしないという強い意思を持って生きていっていただければ、

更生できる方が多いと思います。

 

7 おわりに

弁護士としてできること、被疑者の方の刑事処罰をできる限り軽くするために(不起訴・起訴猶予にするために)最大限に努力をするということです。

 

再犯をしてしまうかどうかというのは、最後は御本人の意思の強さにかかってきますが、

弁護士としては、御本人を励まして、社会に送り出すしかありません。

私としては、かつての被疑者の方が何か困ったことがあれば、すぐに相談して頂きたいと思いますし、

何か心が折れそうになったときに、心の支えになれる存在でありたいと思っています。

 

最後は脱線しましたが、「示談」は刑事処分の判断に極めて重要な要素です。

「示談」をとるために、被疑者ご本人も(ご家族も)、弁護士も全力を尽くすことが重要であると思います。

 

※ あわせて読みたい記事

その①

家族が逮捕された!早期釈放には弁護士に連絡を!~刑事事件~

その②

家族が逮捕された!早期釈放には身柄引受書を用意!~刑事事件~

 

山田法律事務所 弁護士 山田雄太

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家族が逮捕された!早期釈放には身柄引受書を用意!~刑事事件~

 

弁護士の山田雄太です。

 

ご家族や近しい人が逮捕された場合、すぐに弁護士を探してほしいということを前回の記事で申し上げました。

今回は、弁護士が逮捕された方の早期釈放のために、何を一番必要とするかについて述べたいと思います。

結論から言えば、「身柄引受書」なのですが、

これがないと、早期の身柄解放(釈放)がなかなか容易ではなくなってしまいます。

そこで、身柄引受書が、検察官、裁判官の判断に対してどのような意味を持つのかについて、以下に述べていきます。

 

目次

1 弁護士は逮捕から72時間以内での釈放を目指す

2 72時間は捜査を完了される(処分を決める)には短すぎる

3 釈放後は在宅事件になる

4 再度被疑者の取調べをしたいときに出頭を確保できるか

 

では、本編です。

1 弁護士は逮捕から72時間以内での釈放を目指す

まず、前段ですが、

弁護士は、逮捕から概ね72時間以内での釈放を目指します。

(もう少し正確に言うと、勾留決定を取られないように活動します)

 

逮捕の手続きの中で、捜査機関が被疑者(逮捕をされた人)の身柄を拘束することができる制限時間は、逮捕から72時間です。

この72時間を超えて、被疑者(逮捕された人)の身柄を拘束するためには、「勾留」という全く別の手続きが必要で、捜査機関(検察官)は、裁判官に「勾留決定」をもらわなければなりません。

弁護士としては、この勾留決定を取られないために、

検察官に対しては、「勾留請求をするな」を意見書を出すし、

裁判官に対しては、「勾留決定をするな」と意見書を出すし、

勾留決定が出されてしまったら、「勾留決定に対する準抗告」をするのです。

 

そのため、弁護士は、

逮捕(警察官の取調べ)

→勾留請求(検察官の取調べ)

→勾留決定(裁判官による判断)

→勾留決定に対する準抗告(勾留決定の判断が誤っているので破棄するように求める申し立て)

のどこかの段階で、逮捕された方の身柄を釈放できるよう、活動をすることになるのです。

言いかえれば、検察官、あるいは裁判官に対して、

「この被疑者は釈放(解放)しても大丈夫だろう」と思ってもらう必要があるのです。

検察官・裁判官に釈放(解放)しても大丈夫だろうと思ってもらうためには、

「身柄引受書」が何よりも重要ということになるのです。

 

2 72時間は捜査を完了される(処分を決める)には短すぎる

そもそも、逮捕の時間制限である72時間の間に、捜査機関(警察・検察)が全ての捜査を完了させ、被疑者の処分を決めることは不可能です。

被害者がいる場合には、被害者の話を聞き、

その裏付けとなる証拠(例えば防犯カメラ等)を取り、

被疑者をさらに取調べ、

逮捕された被疑者にどのような処分をするのが適切なのかということを判断するには、時間がどうしても足りません。

そのため、捜査機関(警察・検察)による捜査は、72時間を超えても続くことがほとんどです。

その72時間を超えた続きの捜査を、

被疑者の身柄を拘束したままで行うのか、

いったん被疑者の身柄を解放(釈放)したうえで行うのか、

という違いなのです。

その際に、検察官が、「被疑者の身柄を解放(釈放)したとしても、捜査に支障がないか?」という判断をして、

逮捕されている被疑者の身柄を解放(釈放)するかどうかを決めるのです。

つまり、

仮に、逮捕された被疑者が釈放されたとしても、

「捜査は終わっていないぞ。逃げるなよ。捜査の邪魔はするなよ。」

ということが前提となります。

被疑者が逮捕段階で釈放される場合には、

「処分保留で釈放」となるのですが、それは捜査がまだ終わっていないから「処分保留」ということで外に出られるのです。

 

3 釈放後は在宅事件になる

ということで、逮捕された被疑者の方が外に出られたとしても、捜査は続きます。

「在宅事件」という扱いになります。

(身柄を拘束したままの事件を「身柄事件」というのと対比されます)

当然、被疑者の方は、社会の場に戻ってくることができるので、

何をするにも基本的に何も制限はありません(どこかに行方をくらませることもできます。)。

しかし、検察官としては、被疑者の方の取調べをするため、また検察庁に呼び出す必要があります。

また、捜査が終わっていないので、身柄を解放された被疑者の方が証拠を隠したり、

あるいは、あらたな偽りの証拠を作られたりすることを非常に嫌います。

そのため、検察官としては、

被疑者の方が自宅に帰ったとしても、逃げないか、あるいは、証拠を隠さないかということについては、非常に神経をとがらせるのです。

 

4 再度被疑者の取調べをしたいときに出頭を確保できるか

その際、「逃げないか」という点については、

被疑者の方のご家族等近しい方であれば、「逃がさない。しっかり取調べに出頭させる。」と、検察官を思わせる資料を用意することができます。

それが、「身柄引受書」です。

「身柄引受書」には、検察庁をあて先として、

「私は、被疑者〇〇の妻(夫、あるいは父・母等)ですが、被疑者〇〇のことをしっかりと監督し、御庁からの呼び出しがあれば必ず出頭させます。」

等のことを書きます。

これによって、

少なくとも、検察官は、

「家族がしっかり監督すると誓約している」

「この被疑者には、身柄引受書を書いてちゃんと監督してくれる家族がいる」

「この被疑者は、わざわざこの家族を捨ててまで逃げないだろう」

という方向に判断してくれる可能性が高まるのです。

 

もちろん、検察官に

「この被疑者は逃げないだろう。取調べに呼び出せばちゃんと出頭するだろう」

と思ってもらうには、これだけでは十分ではなく、

「ちゃんと定職についているか」とか、

「前科前歴がないか」(つまり前に犯罪をやっていない)とか、

総合的に事情を判断して、釈放をするか否かを決めます。

 

そのため、「身柄引受書」を書けば、逮捕された被疑者の方の早期釈放ができるというものではありません。

しかし、「身柄引受書」を書くことは、

逮捕された被疑者の方の早期釈放のために、不可欠の要素と言えるでしょう。

逆に言えば、

「身柄引受書」を用意できなければ、被疑者の早期釈放の可能性は、ある場合に比べ、かなり低くなると言えるでしょう。

 

もちろん、被疑事実(犯罪行為)がかなり軽ければ、「身柄引受書」がなくても72時間以内に外に出て来ることができることもあるでしょう。

しかし、

被疑者の方の弁護人となる弁護士としては、

どうにかご家族等に「身柄引受書」を書いていただくために、全力を尽くすことになるのです。

 

※あわせて読みたい記事

その①

家族が逮捕された!早期釈放には弁護士に連絡を!~刑事事件~

その②

示談はなぜ必要か(不起訴・起訴猶予を取る)~刑事事件~

 

山田法律事務所 弁護士 山田雄太

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家族が逮捕された!早期釈放には弁護士に連絡を!~刑事事件~

 

弁護士の山田雄太です。

 

ご家族が逮捕された場合、すぐに弁護士を探してください。

 

 

ご家族が逮捕された場合、その連絡は突然来ます。

特に、普段、何の問題もなくご家族が日常生活を送っているときは、なおさら突然に感じます。

見知らぬ電話番号から電話がかかってきて、電話に出たら「○○さんが逮捕されました。」と警察から連絡がくるのです。

(もちろん、知人の方が逮捕の現場にいたら、あらかじめ伝え聞くことができますが。)

その時、家族として、逮捕された方のために何をすべきか、あるいは、弁護士が何が出来るかを、この記事ではお伝えいたします。

(本記事では、えん罪の場合ではなく、基本的にはご本人に何らかの逮捕の理由がある場合を想定して書かせていただきます)

 

目次

1 警察から連絡がきたらまずは弁護士を探す

 (私ももちろん対応します090-8490-5089)

2 弁護士に依頼して逮捕された方に会いに行ってもらう

3 何故弁護士にすぐに接見に行ってもらわないといけないのか

4 逮捕から始まる身柄拘束の制度のご説明

5 早期身柄解放のチャンスは大きく3回

6 警察から連絡が来てから24時間が勝負

7 弁護士は家族の依頼を受けてから身柄解放のために何をするか

8 早期身柄解放ができるかで人生が変わる

 

では、本編です。

1 警察から連絡がきたらまずは弁護士を探す(自分で探す)

警察が家族に連絡をするのは、逮捕の翌日(の朝)です。

逮捕した瞬間には連絡をしません。

いちど、警察署に連れて行って、取調べをしてから連絡することが多いです(現行犯逮捕でその場に家族がいる場合には、すぐに逮捕の事実がわかりますが。)。

かつ、日常的に普通の生活を送っている人が逮捕される最大の原因が「酒」です。

お酒を飲んでトラブルが起き、夜(深夜)に逮捕されることが多いので、

その意味でも、警察は、翌朝に逮捕の事実を家族に伝えます。

最近の警察は、「〇〇さんが逮捕されたから、すぐに弁護士を探しなさい」と言って、弁護士を探すよう言ってくれますが、昔は、わざわざ家族に連絡をくれない時代もありました(その場合には、国選弁護人が会いにいって初めて家族が逮捕の事実を知ることもありました。国選弁護人の話はまた機会を別にしてお話します。)。

その意味では、昔に比べれば、家族は早期に動き出しがしやすくなったといえます。

で、警察から家族が逮捕されたと連絡が来たら、

何はともあれ「弁護士をすぐに探す」ことが重要です。

なぜか。

それは、弁護士が早く動き出しができればできるほど、家族の早期の身柄解放の可能性が高まるからです。

(重すぎる犯罪(例えば殺人や強盗)が被疑事実になっている場合にはなかなか難しいこともありますが)

また、弁護士でないと、時間に関係なく逮捕された方に会いに行くことができません

(その意味では、外にいるご家族が自分でできることには限界があります。)。

逮捕から時間がたっていなければいないほど、弁護士ができることが増えます。

そのため、すぐに弁護士を探してください(インターネットでも探すことができます。)。

もちろん私も対応します(090-8490-5089)。

これは、絶対です。

 

2 弁護士に依頼して逮捕された方に会いに行ってもらう

弁護士が見つかったら、弁護士にすぐに逮捕された家族に会いに行ってもらってください。

弁護士でないと、逮捕された人への面会(一般面会)は著しく制限されます。

身内(家族)だとしても同じです。

 弁護士でなければ、平日の午前8時30分から正午まで、そして、午後1時から午後5時15分までの間で、15分から20分間しか会えません。

(一般面会の受付は、午後4時くらいで打ち切りにされることもあります。)

土日、祝日は一切会いに行けません。

かつ、逮捕されてから72時間の間は、取調べもあるため、なかなか一般面会は認められません。

さらに、一般面会は1日の間に1組しか行うことができないため、先にだれかに面会されてしまっていると、自分は面会できないということもありうるのです。

しかし、

弁護士であれば、24時間、土日、祝日関係なくいつでも逮捕された方に会いに行くことができます(これを「接見」といいます。)。

仮に、逮捕された方が取調べの最中であったとしても、初回の接見であれば、取調べの中断を求めて接見を行うことすらできます。

これは、どうあっても弁護士でなければできないことです。

そのため、時間が勝負の逮捕直後の場合には、弁護士が逮捕された方に少しでも早く会い、身柄開放のための活動に入るということが、釈放の有無を左右すると言っても過言ではないのです。

ご家族が逮捕されてしまったら、すぐにでも弁護士を探していただければと思います。

 

3 何故弁護士にすぐに接見に行ってもらわないといけないのか

では、なぜ弁護士にすぐに接見に行ってもらわないといけないのでしょうか。

それは、逮捕された本人に会って、初めて早期釈放のための活動を始めることができるからです。

逮捕された状況を一番わかっているのは、逮捕された本人であることが多いです。

もちろん、家族の目の前で逮捕された場合には、その家族も逮捕の状況を把握していますし、

逮捕された本人が泥酔していたら、そもそもなぜ自分が逮捕されたのか、自分がなぜ警察の留置所にいるのか、逮捕された本人が全くわからないこともあります。

しかし、多くの場合、断片的にでも逮捕された理由を覚えていることが多いです(自分が手錠をされるというのは相当インパクトのある出来事です。)。

そのため、弁護士は、まずは逮捕された本人に会いに行き、

「何があったのか」

「何故逮捕されたのか」

を聞きます。

これによって、弁護士は、

「逮捕された人が何をやってしまったのか(被疑事実)」

(あるいは何もやっていないのか)

「被害者はいるのか」

等々を把握します。

その上で、弁護士としては、逮捕された方のご家族と会い、

「身柄引受書」「陳述書」を書いていただき、

被害者の方がいらっしゃる場合には、なんとか「示談」(被疑者を許すという趣旨の紙にサインをしていただく)ができるよう活動をすることになります。

(その際はご家族に「示談金」をご用意していただきます)

そして、検察官に「意見書」を書き、逮捕された方の早期釈放を求めることになります。

(上記の活動を、ご依頼を受けてから実質24時間以内に行わなければなりません)

逆に言えば、上記のような弁護活動は、逮捕された方と会って初めて開始することができるのです。

逮捕された方に接見にいくのは、すべての弁護活動のスタートとなります。

そのため、

弁護士が少しでも早く、逮捕された方に接見に行くというのは、何よりも重要なことなのです。

 

4 逮捕から始まる身柄拘束の制度のご説明

身柄拘束の制度として大きく意識すべきは、

①逮捕(警察官による取調べ)

②検察官による取調べ・勾留請求

③裁判官による勾留質問・勾留決定

④勾留決定に対する準抗告

です。

以下に、その詳細を述べます。

 

(1)逮捕(①)

基本的に、逮捕される場合、

捜査機関が被疑者の身柄を拘束できる時間は72時間までです。

つまり、

逮捕の手続の段階で身柄を解放することができれば、どんなに遅くとも、逮捕から72時間以内に外の世界に帰ってくることができます。

(警察が逮捕の際に、逮捕時間を明確に言っている(「〇時〇分逮捕」と必ず言います。)のは、身柄を拘束できる時間制限があることを意識しているからです)

逮捕の時間制限72時間のうち、

48時間が警察の持ち時間であり、残りの24時間が検察の持ち時間です。

48時間の間に警察は被疑者の取調べをし、

検察官に被疑者を送ります。

 

(2)検察官による取調べ・勾留請求(②)

検察官は、警察署から送られてきた被疑者の取調べをし、

被疑事実はなにか、

本人が被疑事実を認めているか、

本人の認識はどのようなものか、

捜査は完了しているのか(証拠は十分に確保しているのか)

等の状況をもとに、

さらに身柄を拘束する必要があるか否かについて判断をします。

逮捕の時間制限である72時間を超えて身柄を拘束するためには、

裁判官による「勾留決定」

といって、裁判官による許可が必要となります。

この、裁判官の「勾留決定」が得られれば、

さらに、10日間、被疑者の身柄を拘束することができます(これを「勾留」といいます。)。

(この10日間は、日常的に仕事をしている方にとっては絶望的な長さであるということは容易に想像がつくでしょう)

検察官は、72時間を超えて被疑者の身柄を拘束する必要があると判断すれば、

裁判官の「勾留決定」を得るために、「勾留請求」をすることになります。

弁護士としては、逮捕された方を早期釈放するために、

どうあっても勾留決定をされるのを防ぐ必要があります。

そのため、

弁護士の早期釈放のための活動は、ほぼすべて「勾留決定」を取られないための活動であると言えるでしょう。

(対検察官では、弁護士は勾留請求をしないよう「意見書」を送ることになります。)

 

(3)裁判官による勾留質問・勾留決定(③)

裁判官は、検察官から勾留請求があると、被疑者と面接をして(これを「勾留質問」といいます。)、

「勾留決定」をするか否かを判断します。

勾留決定をするか否かにあたっては、主に、

被疑者が、

「逃亡をするか」(取調べに呼んだらちゃんと来るか)

「罪証隠滅をするか」(証拠を隠すか?あるいは、新たな自分に有利な証拠を作成するか?)

という要素から、勾留決定をするのが適切か否かを判断します。

逆に言えば、

「逃亡をしない」(ちゃんと取調べの呼び出しがあれば来る)

あるいは、

「証拠を隠さない」(証拠を隠すことは観念できない)

と判断してくれれば、

勾留はしないという判断(「勾留却下」といいます。)をしてくれます。

(弁護士としては、勾留請求をされてしまった際には、裁判官に向けて、勾留決定をしないよう「意見書」を書くことになります。)

 

(4) 勾留決定に対する準抗告(④)

裁判官によって、勾留決定がされてしまった場合には、

弁護士は、「勾留決定に対する準抗告」を行うことになります。

これは、「裁判官の勾留決定の判断は誤っているから、再度勾留決定をすべきか否か判断して欲しい」と裁判所に申し出ることをいいます。

この「準抗告」をした場合には、「勾留決定」をした裁判官とは別の裁判官3名(「裁判体」といいます。)で「勾留決定」が適切だったか否かについて再度審理することになります。

この裁判体によって弁護士による申立は正しいということになれば、

勾留決定は破棄され、

逮捕された方はすぐに釈放されることになります。

 

これ以降となると、「勾留取消」の申立等を行うことになりますが、

やはり、どんなに短くとも72時間に加えて数日間は身柄を拘束されることになります。

よって、「勾留決定」をなんとか免れるということが、早期釈放のために何よりも重要なこととなってきます。

 

5 早期身柄解放のチャンスは大きく3回

その意味で、早期身柄解放のチャンスは大きく3回です。

第一に、検察官が勾留請求をするか否かの段階での検察官の判断

第二に、裁判官が勾留決定をするか否かの段階での裁判官の判断

第三に、勾留決定を出した裁判官とは別の裁判体による、勾留決定に対する準抗告についての判断

となります。

この3回の機会それぞれに、

弁護士は、検察官、裁判官、(それとは別の)裁判体に対して、なんとか早期に身柄を釈放するための「意見書」を書いたり「準抗告の申立」をすることになります。

そして、上記の「意見書」や「準抗告の申立」の内容を充実させるためには、

弁護士と逮捕された方(そしてそのご家族)との綿密な打ち合わせが不可欠なのです。

これを、弁護士はご依頼を受けてから実質24時間以内に行う必要があるのです。

 

6 警察から連絡が来てから24時間が勝負

では、弁護士の活動時間である「実質24時間」とはどういう意味でしょうか。

例えば、金曜日の夜にAさんが逮捕されたとします。

そうすると、Aさんの家族(「Bさん」とします。)に警察から連絡がくるのは土曜の朝です。

(金曜の夜から土曜の朝までにおおよそ取調べは終わっています)

そして、警察から検察にAさんが送られるのは、日曜の朝です。

というのは、警察から検察に被疑者が送られるのは一日一往復しかなく、

朝、各警察署に警察のバスが巡回して被疑者を乗せ、検察庁に被疑者を連れていくことになります。

そして、検察庁の狭い待合室で、順番に被疑者が検察官に呼ばれ、

全員の取調べが夕方に終わって、

また、バスに乗って各警察署にバスが巡回して被疑者を連れて行くのです。

そうなると、日曜日の朝には、検察庁にAさんは連れていかれてしまいます。

Bさんが土曜日の朝、警察からの連絡を受けて、すぐに弁護士を探して連絡したとしても、

弁護士が、検察官に対して「勾留請求すべきでない」との意見書を出すまでのタイムリミットは、日曜日の朝までの24時間しかないことになるのです。

 

7 弁護士は家族の依頼を受けてから身柄解放のために何をするか

弁護士(私)が、依頼を受けてから24時間の間に、何をするかについて述べます。

 

まず、何よりも早くAさんと接見して事情を把握し、

(Bさんに伝えたいことがあれば伝言を預かって)

Bさんと会って、Aさんの状況を報告し、

Bさんに身柄引受書(要は、もしAさんを釈放してくださる場合には、Aさんの取調が今後も行われる際には必ずAさんを捜査機関に出頭させますとのBさんの誓約書)を書いてもらい、

さらに、Aさんを早期に釈放しなければどうしても困る家族の事情をBさんに聞いて、陳述書にまとめて、Bさんのサインをいただき、

BさんからAさんへの伝言を預り、

もし被害者(「Cさん」とします。)がいるのであれば「示談金」を預り、

Cさんに対して、弁護人として謝罪にいき、なんどか示談書にサインをしていただくようお願いをし(これは、24時間の間にできないことも多いですが)、

Aさんに二度目の接見に行って、

Bさんの伝言を伝え、

(Aさんが被疑事実をやったことに間違いがないのであれば)2時間ほどかけて反省文を手書きで書いてもらいます。

(警察署でこれをやって接見室を占領するとほかの弁護士に迷惑になりかねないので、深夜の11時くらいに接見に行きます)

そして、最後に集めた資料を基に、

検察官に対して「勾留をするべきではない」との「意見書」を書いて、日曜の朝に、検察庁にFAXをします。

意見書を書くにあたっては、

Aさんが

「逃亡はしない」

「罪証隠滅はしない」

という要素を全力で書くことになります。

「逃亡はしない」という要素であれば、

「定職についていて、家族もいるのに、あえてそれを捨て去って逃亡することは考えられない」とか、

「罪証隠滅はしない」という要素であれば、

「警察の捜査において証拠の収集はすべて終わっている」とか、

「あえて被疑者が被害者に接触をするということは考えられない(そもそも被害書の接触方法が被疑者にはない)」とか、

「逮捕時被疑者は一人であり、あえて被疑者が別の者を目撃者として虚偽の証言をさせることは考えられない」

等を書きます。

被疑事実があまり重くなければ(万引きや器物損壊、公務執行妨害の程度が軽いもの等)、

上記の準備をすべて行うことができれば、検察官への意見書によって検察官が「勾留請求をしない」との判断をしてくれる可能性はそれなりにあるでしょう。

しかし、これだけの活動をするには、どんな弁護士といえども24時間は欲しいところです(もちろん24時間より短かったとしても全力を尽くします。)。

そのため、家族が逮捕されたということがわかったら、すぐに弁護士を探してほしいのです。

 

8 早期身柄解放ができるかで人生が変わる

大げさな話ではなく、早期身柄開放ができるか否かで人生が変わります。

逮捕されてから72時間程度であれば、

急病になった等で、会社への説明もなんとかつくことが多いです。

しかし、この72時間をこえて、さらに10日間(最悪さらに10日間の合計23日)身柄を拘束され続けるということになれば、

会社にすべての事情を話さなければならなくなります。

そうすれば、最悪「解雇」ということにもなりかねません。

会社としては、逮捕される等の事情があった場合には、必ず会社に報告するよう一般的には定めているでしょう。

しかし、弁護士の立場とすれば、

逮捕された依頼者がどうしても「会社に知られたくない」という意思があった場合には、その意思を最大限尊重した上で弁護活動を行う必要があります(「誠実義務」といいます。)。

そのため、逮捕された依頼者の希望があれば、

会社に知られることなく72時間以内になんとか釈放できるよう、最大限努めることになるのです。

そして、72時間以内に外に出ることができれば、多くの人は、仕事と家族を守ることができるのです。

 

以上、長々と述べましたが、

家族が逮捕された際には、何よりも早く弁護士を探して連絡をしていただければと思います。

 

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家族が逮捕された!早期釈放には身柄引受書を用意!~刑事事件~

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山田法律事務所 弁護士 山田雄太

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離婚したい!でも離婚協議は慎重に!~離婚~

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回は、離婚原因があるとは明確には言えないときの離婚協議の方法についてお伝えしたいと存じます。

離婚をしたい方にとって、配偶者に「離婚はしない」、あるいは、「離婚はしたくない」と言われるのは非常にやっかいなことです。

 

なぜか。

それは、離婚についての合意ができない限り、離婚を前提とした諸条件(親権、養育費、面会交流、財産分与)の話し合いに進むことができないからです。

これは、離婚原因が認められるだけの証拠を確保できている場合でも同じです。

結局、最後まで相手が離婚をしないと強固に言った場合には、最後は、離婚訴訟での裁判所の判決まで必要になるからです。

その意味では、離婚原因が認められるだけの証拠が確保できていたとしても、離婚についての合意ができることがもっとも望ましいといえます。

離婚原因が認められるとは明確に言えない場合には、なおさら、相手方が、「離婚しない」と言うことは、何としても避けたいことと言えます。

離婚原因が認められないケースの時に相手が離婚しないと言った場合、どうなるでしょうか。

それは、「離婚が認められない」ということです。

言い換えれば、調停、裁判を経ても、判決によって、「離婚が認められない」という判断が下されるということです。

そうなると、また一から(調停)訴訟を始めなければならず、本当に離婚が成立するのは、想定していたよりも、かなり遅くなってしまうということになります。

よって、ご自身の中で、離婚原因が認められるか微妙だとお考えの場合には、相手方との交渉においても、慎重に交渉をすることが望ましいといえるでしょう。

以下に、相手方の対応によって、ご自身が取るべき交渉の方法について、簡単にお伝えいたします。

 

目次

1 まずは離婚の合意を得る

2 相手方が離婚自体を争わない場合にどう進めるか

3 相手方が離婚自体を争ってきた場合にどうするか

4 万が一離婚原因が認められるか微妙な展開になったらどうするか

 

では、本編です。

1 まずは離婚の合意を得る

離婚原因が認められるか微妙な場合には、とにかく、交渉のスタートは慎重にならなければなりません。

こちらから、「離婚をしたい」と言って、その理由を説明し、関係修復は不可能だと理解させる、というのが一般的なルートといえるでしょう。

しかし、「離婚をする」ことを目標とする交渉において、先に「離婚をしたい」と言ってしまうと、なかなか交渉が簡単に進まない傾向にあるのは間違いありません。

そのため、自分からは言わず、相手から「離婚をしたい」と言わせるのが上級者と言えるでしょう。

ただし、これは本当に容易ではありませんし、離婚をするために(相手に「離婚をしたい」と言わせるために)、その後の離婚協議を不利にするような行為をすることは絶対に避けなければなりませんから(例えば、不貞をする等)、これは、もしできればするくらいのスタンスだと思います。

基本的には、「離婚をしたい」と伝えて、合意が得られれば、それでよし。

合意が得られず、らちがあかなければ、別居に踏み切るというのが、最も多いパータンではないかと思います。

とにかく、相手方に「婚姻生活の維持は不可能だ」、「既に婚姻関係は破綻している」、「配偶者の気持ちは固い」と理解させる必要があります。

ここで、「離婚したくない。考え直してほしい。」と言われて、「考えてみる。」と答えるのは絶対にあってはなりません。

毅然とした態度で、「この点についての交渉の余地はない。」、「離婚の意思は固い。」と伝え続けることが重要です。

 

2 相手方が離婚自体を争わない場合にどう進めるか

相手方が離婚自体は争わない場合(離婚をすることについて合意を得られている場合)、

この場合には、残るテーマである親権、婚姻費用(離婚まで)、養育費(離婚後)、面会交流のテーマに集中することができます。

これも、交渉の順序は慎重に進めた方が良いと思います。

というのは、内容によっては、交渉内容に先後関係があるからです。

例えば、養育費や面会交流については、親権をどちらにするかが決まらないと、具体的な話には進みません。

にもかかわらず、自分に親権があることを前提として、養育費をいくら欲しいとか、面会交流の頻度はこれくらいにとどめて欲しいとか、そういう要求をすると、相手の態度が硬化するリスクがあります。

そのため、早く進めたいお気持ちは理解されるところですが、

一歩ずつ、進めていくことが重要です。

まずは、離婚の合意、それから、親権の合意。

その合意ができて、初めて、養育費や面会交流の交渉を進めるべきです。

(なお、別居後の婚姻費用の話し合いは、離婚の合意の前からできますので、別居後すぐに始めても問題ないでしょう。)

しかし、任意の話し合いを続けていても、親権の合意ができないことはままあります。

その場合には、調停に進むことになるでしょう。

親権については、裁判所での調停において、一定の方向付けも期待できることになります。

すなわち、親権については、「家裁調査官」という裁判所に所属する専門家が、子供の親権をどちらの元におくべきかを判断してくれ、家裁調査官としての意見書を書いてくれます。

この意見書が、基本的には裁判官の判断の前提となるので、親権についての話し合いも、家裁調査官が意見書まで書いてくれれば、話し合いにおける大きな材料になるといえるでしょう。

また、婚姻費用、養育費、面会交流についてにも、(調停に入れば)調停委員が一定の方向付けをするよう努めてくれますし、

調停前であっても、弁護士をつければ、全て、弁護士が交渉をする範囲となります。

 

3 相手方が離婚自体を争ってきた場合にどうするか

相手方が離婚自体を争ってきた場合、

この場合には、離婚原因自体が問題となりますので、ご自身としては、離婚原因にあたる事実の主張をしなければなりません。

今回は、離婚原因が認められるかが微妙な(明確にない)ケースを想定しているので、なかなか悩ましいですが、

離婚原因に資する証拠はすべて出すという強い気持ちを見せて頂きたいと思います。

そのためには、LINEのやり取り、録音、写真、日記等、何でも出せるものは出せるようにしたいところです。

よって、離婚の話し合いをスタートする前には、離婚を争われた時に備えて、離婚原因に関する証拠については、何でも残しておき、記録化するようにしておくことが重要です。

このように、離婚の合意がなかなか出来ない場合には、

任意の話し合い→調停→訴訟

の展開になるでしょう。

 

4 万が一離婚原因が認められるか微妙な展開になったらどうするか

万が一、離婚事由がなかなか認められるか微妙な展開になった場合には、一つの選択肢として、調停において「当面別居」同時に、相手方のほうが収入が高い場合には、定期的に婚姻費用を貰うとの合意も得ます。)ということで合意をするという手段もございます。

すなわち、現在の状況では離婚原因の立証がなかなか困難となってしまった場合には、別居期間を稼ぎ、離婚原因の一つの基礎事情に加えるということになります。

この場合には、時間はかかります(別居期間3年程は必要です)が、(相手の方が収入が高ければ)婚姻費用を貰い続けながら、別居期間を稼ぎ、時を待って、離婚を求める調停、裁判を起こすことを考えることになります。

すぐに離婚したい場合には、なかなか容易ではない選択ですが、(相手の方が収入が高ければですが)婚姻費用を定期的にもらうことができることと、別居期間が増えるごとに少しずつ離婚に近づいていくと考えることができるので、最後の選択肢としては、残しておいても良いものだと思います。

以上を踏まえ、離婚の話し合いをスタートする場合には、慎重に進めて頂ければと存じます。

何か、ご不明点やご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

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内縁関係を証明するための大きな2つの要素

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回は、内縁関係を証明する為に必要な大きな2つの要素についてご説明いたします。

これらの要素を複合的に判断して、総合的に内縁関係があるか否かについて、判断が下されることになります。

その意味で、内縁関係を判断する2つの要素について、ご説明いたします。

 

目次

1 当事者間の婚姻(と同様)の意思

2 夫婦共同生活の存在

 

 

内縁の成立には、大きく二つの要件があります。

 

1 当事者間の婚姻(と同様)の意思

一つ目は、当事者間の婚姻(と同様)の意思です。

内縁は、婚姻届けを出していないだけで、その他は、婚姻がある状態と同じ状況である必要があります。

そのため、当事者双方が婚姻(と同様)の意思があることは前提として、それが、外形的にわかるように、扶養配偶者としての通知を会社・役所に提出したとか、

友人に、(実質上の)妻として紹介していたとか、両親との間で彼と内縁関係にあることが前提となっていたとか、

そのような何らかの事情が必要になるでしょう。

その意味では、お相手との関係で、夫婦と同様に、対外的にも挨拶をしたり、双方のご両親とも交流をしているほうが望ましいといえるでしょう。

 

2 夫婦共同生活の存在

二つ目は、夫婦共同生活の存在です。

内縁の成立には、内縁の当事者が、同居をしたうえで、夫婦としての共同生活を営んでいる必要があります。

当然、一緒に住んでいる期間は、長ければ長いほどよいでしょう(何年経てば内縁が認められるとは断定的に言いにくいところですが。)。

ただし、自分の部屋が別にあり、相手の部屋に週3回とか4回とか通っているという限りでの関係では、内縁関係と判断されるには消極といえます。

 

その意味では、住民票も一緒の世帯になっているほうが望ましいです。

一緒の世帯になった上で、相当期間の経過があれば、内縁関係を認めるに当たって積極の要素になると思われます。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

 

 

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離婚に向けた別居の前に準備したい6つのこと~離婚~

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回は、離婚に向けて別居する前に準備しておきたいことを、6つお伝え致します。

離婚に向けて、別居をするということは、相手方への明確な意思表示になるほか、別居期間を稼ぐという意味でも非常に重要な選択となります。

 

しかし、別居をするに当たっては、

相手が離婚原因を争う可能性がある場合、

養育費の額で争いになりそうな場合、

相手方が不貞をしている場合、

相手方と財産分与で争いになりそうな場合

等、今後、争いになる要素がある場合には、別居を決行する前に、十分な準備をする必要があります。

基本的には、争いなった場合にものをいうのは客観的な資料(紙の資料等)になりますから、それをいかに確保できるかが非常に重要となります。

 

今回は、上記の点も含め、離婚に向けて別居をする前に準備していただきたい6つの重要なことについてお伝えしたいと思います。

 

目次

1 離婚原因を主張する際の材料となる資料を残しておくこと

2 不貞の証拠を確保しておくこと

3 配偶者の財産状況を出来る限り調査しておくこと

4 別居後の生活場所を確保しておくこと

5 (両親等)身内の方に事前に相談しておくこと

6 重要な荷物は全て持っていけるようまとめておくこと

 

では、本編です。

1 離婚原因を主張する際の材料となる資料を残しておくこと

別居をした上で、離婚に向けた交渉を始めることになるわけですが、

相手方が、「離婚をしたくない」と言って、離婚の有無を争い始めた場合には、

最後には「離婚原因」が勝負になります。

つまり、最初は、離婚の有無について、裁判所の手続外で協議を模索しても、

合意が得られなければ、調停での話し合いに移行し、

それでも、話し合いがつかなければ、

調停を不調として、離婚訴訟に移行することになります。

そして、離婚訴訟においては、離婚が認められるか否かは、「離婚原因」が認められるか否かによって決まってくるわけです。

 

よって、話し合いによる解決(離婚合意)の可能性がある場合であっても、最後にこじれた時に備えて、「離婚原因」にあたるような資料を揃えなければなりません。

以下に、離婚原因にあたる資料を列記いたします。

 

(1)相手方が不貞をしている場合

相手が不貞をしている場合には、明確に離婚原因は認められます。

かと言って、口頭レベルで「不貞をしている」と主張をしたとしても、裁判所においては認定してもらえないので、

配偶者が不貞をしている「証拠」が必要です。

では、証拠は何かということですが、この部分は、下記の「2 不貞の証拠を確保しておくこと」と完全に重複するので、「2」に譲ります。

 

(2)相手方にDVをされている場合・暴言を吐かれている場合

相手方にDVをされている場合には、身の危険が高まっているので、一刻も早く別居の検討をしなければなりません(実家に逃げることも躊躇してはいけません。)。

そのため、可能であれば、という限りですが、

相手方にDVをされた場合には、何かしらの怪我をしているはずですから、

①「すぐに病院に行きましょう。」

そして、

「診断書を書いてもらう」のです。

診断書に、「全治〇ヶ月」とか「加療〇週間」とか書いてもらえれば、それだけの暴力をふるわれたということが客観的な証拠にも残せます。

キズが完治してしまう前に(あざ等が残っている間に)すぐに病院に行ってください。

また、キズやあざについても、写真等の記録に残しておきましょう。

写真を残しておけば、いつにどのような怪我を負ったのか、ということを客観的な証拠として残しておけます。

この怪我の写真を証拠として出せば、相手方の暴力を客観的に立証する一つの資料となるのです。

③ 録音も重要な資料です。

まさに、暴力を振るわれている時、暴言を吐かれている時の録音を残せておければ、非常に重要な証拠になります。

もちろん、暴力を振るわれたり、暴言を吐かれてから、録音をしようと動いても、それは不可能ですから、

機会をうかがって、いつでも録音をできるように準備をしておくのです。

最近の機械の技術は本当に進歩しているので、ペン型の録音機もあったりします。

どのようなものでもよいですが、録音として残せるように、事前に「その時」に備えて準備をしておくのは重要といえるでしょう。

 日記等も重要な資料です。

この時にこのような暴力を振るわれた。このような暴言を吐かれたという日記は、その時の詳細な記憶を残しておくものですから、裁判所も、一定の信用性をもって見てくれます。

これは、継続的に行っていることが重要です。

何かがあった場合には記憶が鮮明なうちに、必ず記憶に残しておきましょう。

 

(3)モラハラをされている場合

これは、離婚の立証をするに当たっては、明白に裁判所に離婚原因と訴えるには、客観的な材料が不足しがちなケースといえます。

モラハラということで、ではどういうことを言われたのか、とか、

いつ、どのようなシチュエーションで言われたのかとか、

詳細な説明が必要になります。

その意味で、やはり日記は不可欠です。

また、これも同様に、具体的にどのようなことを言われていたかを客観的に残すものは、まさに、録音ですから、

録音もいつでも残せるようにしておきましょう。

 

(4)性格の不一致と言われるような場合

証拠が十分に取れていない場合には、裁判所としては、「性格の不一致にとどまる」ということで、容易には離婚を認めません。

要は「離婚原因」がないと判断してしまうのです。

そうなると、別居期間が重要になってくるのですが、こうなると長期戦を覚悟しなければなりません。

よって、別居が完全に完了して、新たな証拠が取れなくなる前に、何でも良いので、少しでも「離婚原因」に資する証拠を残す努力をされることを強くおすすめいたします。

 

2 不貞の証拠を確保しておくこと

不貞の証拠を確保することによって、

「離婚原因」の立証に資する証拠となりますし、

「不貞行為に基づく慰謝料請求」を相手方にすることもできます。

よって、二つの意味で、不貞行為の証拠を押さえることは重要ですので、証拠確保のために、全力を尽くしていただきたいと思います。

 

では、不貞行為の証拠とは何か。

まず、配偶者と不貞相手がラブホテル等に入っている写真を撮ることです(二人で同時に入っている写真を撮ることが重要です。)。

このような証拠をつかめたら、相手方(配偶者)が、「ホテルでは何もしていない。ただ、話をしていただけだ」というような反論をしたところで、その反論は認められません。

よって、ホテルに二人で入っている写真は、不貞行為の立証にあたっては、決定的といえるでしょう。

ただし、このような写真をご自身で撮るのはなかなか困難とも思われるので、その場合には、探偵等の専門家が必要になるかもしれません。

また、相手方の携帯電話をチェックすることも有用です。

相手方の携帯電話から、勝手に第三者にメールを送ったり、LINEをしたりするのは、別のリスクがあるので避けた方が良いですが、

相手方の携帯電話の画面をそのままご自身のカメラで撮るか、あるいは、情報自体をコピーして確保しておくのがよいと思われます。

相手方が、不貞に気付かれていないと思っている場合には、脇が甘く、不用意に携帯電話等に不貞相手とのツーショットや、場合によっては、行為をしている時の様子を写真や動画に残しておくこともあります。

不快かとは思いますが、これらの証拠を確保しておくと、後々大きな武器になりますので、大事に確保しておくことをお勧めいたします。

その意味では、相手方のLINEやメールでの不貞相手とのやり取りも重要な証拠になる可能性があります。

これも、ご自身にバレていないと思っている場合には、そのままLINE上の会話を残していることもありますから、具体的に不貞をうかがわせるやり取りがあった場合には、携帯の画面を写真等に残すことで、証拠化することも有用でしょう。

④SuicaやPASMO(関東県外の方は、それに該当するもの)の、利用履歴をとることも有用です。

これは二つの意味があって、

一つは、定期的に不貞相手の家等に言っている場合、不貞相手の家を特定できれば、そこに定期的に通っていたということの間接的な証拠になります。

二つは、この履歴によって、行動パターンが読めるので、将来的に不貞の決定的な証拠を押さえられる可能性が高まるのです。

これらSuicaやPASMOの利用履歴は、駅の自動券売機のメニューの中から発行できますので、頃合いを見計らって記録を取るのは有用といえるでしょう。

家用車がある場合、自家用車に録音機を残しておくことも一つの手段です。

ここで、相手方(配偶者)と不貞相手が会話しているところをおさえられた場合には、これも証拠になるでしょう。

 

以上のように、不貞をうかがわせる証拠というのは色々とありますし、これらの証拠を積み重ねて不貞の事実を立証していくので、証拠は多くあることに越したことはありません。

よって、相手方が不貞をしているとの確信がある場合には、色々と工夫をして、証拠を残す努力をされると良いと思います。

 

3 配偶者の財産状況を出来る限り調査しておくこと

配偶者の財産状況を調査することは、

財産分与の交渉をする際に重要になること

に加え、

婚姻費用や養育費の交渉をする際にも重要になります。

それぞれご説明いたします。

 

(1)財産分与の交渉の際に重要となる視点から

財産分与とは、ざっくり申し上げると、

結婚してから離婚するまでに増えた財産を夫婦で等分に分けるという制度のたてつけです。

しかし、配偶者が自己の財産をすべて自分に開示してくれているかというと、そうではないケースが多分にございます。

そのため、同居中に、配偶者の財産を把握できる資料を、写真等でできるだけ押さえておく必要があるでしょう。

代表的な例は、

不動産の登記等の権利関係

預金通帳

株、証券

生命保険

となるでしょうか。

隠している預金等はいくらでも想像し得ますので、別居が始まって、調査ができなくなる前に、できるだけの調査をするのが望ましいといえるでしょう。

 

(2)養育費や婚姻費用の交渉の際に必要となるという視点から

この視点は、相手方がどれだけの収入があるかという視点になります。

当然ですが、相手方の収入が高ければ高いほど、養育費や婚姻費用を多くもらえることになります。

離婚調停になって、婚姻費用分担調停等を行えば、相手方がサラリーマンであれば、源泉徴収票等を出してもらえば、それで年収がわかりますし、あまり隠せる要素はありません(とはいえ、源泉徴収票がもし発見出来たら写真等に残しておきましょう。)。

むしろ、配偶者が副業等をしていて、源泉徴収票を貰っているのとは別に、確定申告をしているような場合には、確定申告の書類等を確保しなければなりません。

この場合には、相手方が源泉徴収票だけ出して、収入を過度に小さく見せようとしたりするので、同居中にできるだけ確定申告の資料も確保できるのが望ましいといえます。

また、相手方が事業を経営している場合には、会社にお金を残し、自分の給与をかなり圧縮することで、不当に収入を小さく見せようとすることもあります(特に、一人会社とか小規模でやっている場合には注意が必要です。)。

その場合には、個人としての確定申告に加えて、会社としての確定申告も確保できると望ましいといえるでしょう。

 

4 別居後の生活場所を確保しておくこと

別居を結構する前には、当然別居後の生活場所を確保しておく必要があります。

別居先の住所を知られたくないのであれば、秘密裏に不動産を探しておく必要がありますし、

また、転居先の住民票も追いかけられない様に注意をする必要があります。

これは、別居が出来た後の話ですが、

(非常に面倒ですが)その際、市区町村の役所に行って、住民票の情報を秘匿にしたいという相談をする必要があります。

色々と聞かれますし、かなり大変ですが、身を守る為に必要であれば、頑張って乗り切る必要があります。

 

別居先が実家のこともあるでしょう。

その場合には、事前に別居を考えている旨を実家のご両親とも相談をしておく必要はあるでしょう。

 

5 (両親等)身内の方に事前に相談しておくこと

その意味で、別居を決行する前に、身内の方に相談をしておくことは不可欠です。

場合によっては、時間が切迫する中で、別居を決行しなければならないこともあり得ます。

たくさんの荷物を短時間で運ばなければならない状況になることもあり得ます。

その際に、いつでも応援にきてもらえるように、身内の方には準備をしていただく必要があると思います。

 

6 重要な荷物は全て持っていけるようまとめておくこと

離婚のご相談を受けていて、

「荷物の運びだし」というのが重要なテーマになることが度々あります。

それは、重要なものも何も持っていくことができず、着の身着のままで逃げてきたとか、戻ることができず、そのまま実家にいたとか、

ケースによっては様々です。

この場合、相手方は、すでに別居状況になっており、かなり対立関係になっていることが多いです。

その際、「荷物の運び出し」の交渉をすることは容易ではありません。

そもそも、家に入れないとか、かなり強硬な対応をされることもままあります。

そのため、別居をする際には、重要なものは全て持っていけるように重要なものはまとめておいてください。

仮に着の身着のままで別居をすることになったとしても、

ご自身の健康保険証とか、運転免許証とか、保険の資料とか、通帳とか、マイナンバーとか、そういう重要なものは、代えがききません。

それらがないと、別居後の生活に多大な支障をきたすことになるので、必ず確保する必要があります。

お子さんが学校に通っている場合には、学校用具や教材も必須です。

これらも、ないと本当に困りますから、別居の前にはお子さんに説明をして、すぐに動けるように十分な準備をする必要があるでしょう。

 

以上、別居前に準備して頂きたい6つのことをご説明したしました。

別居というのは、やはり大きな節目になりますから、別居前には周到な準備が必要となります。

また、別居をしてしまったら後戻りはできないですから、後悔のないように、やるだけのことをやったと思えるように、準備をしていただければと存じます。

何かご不明点、心配な点があれば、遠慮なくご相談ください。

 

※あわせて読みたい記事

その①

離婚という目標のために「行動」すべきこと~離婚~

その②

離婚したい!でも離婚協議は慎重に!~離婚~

その③

調停外で養育費を請求する際に意識したい3つのこと~離婚~

その④

離婚をすると決めたら(総論)~離婚~

 

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面会交流を求める交渉時に気を付けたい6つのこと~離婚~

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回は、非監護者(つまり、自ら子供の養育をできていない方)が、

監護者(子供の養育をしている相手方)に対して、面会交流を求める交渉をする際に気を付けて頂きたい6つのことをお伝えいたします。

 

面会交流というのは、お子様を養育できていない方にとっては、お子様とコミュニケーションを取る重要な手段であり、

また、お子様にとっても、普段会えていないもう一人の親と会うことができるというのは、その成長にとって、重要な機会といえます。

そのため、面会交流については、定期的に円滑に行われるのが望ましいのは間違いないでしょう。

一方で、離婚をすることになる(離婚をした)相手に対して、子供と会う機会を求めることになるのですから、なかなか関係が穏やかとはいえません。

そのようなお相手に対し、どのようなスタンスで交渉に臨めばよいか、というのはなかなか難しいテーマといえます。

 

そこで、今回は、面会交流を求める交渉をする際に、是非、気を付けて頂きたいことを6点ほど申し上げたいと思います。

 

目次

1 同じ子供の親としての信頼関係の構築に努める。

2 面会交流と養育費(婚姻費用)は切り離して考える。養育費(婚姻費用)は必ず支払う。

3 養育費は必ず「子供の名義」の口座に支払う。

4 仮に思ったように面会交流ができなかったとしても、養育費(婚姻費用)は払い続ける。

5 長期的利益を見据える。子供と長期的に良い関係を築くことこそが得られる最大の利益

6 最後に困ったら裁判所の手続きで

 

では、本編です。

 同じ子供の親としての信頼関係の構築に努める。

面会交流の交渉の相手は、離婚をする(離婚をした)相手となりますから、当然、関係は穏やかではありません。

色々と言いたいこともあるかと思います。

しかし、お子様との関係においては、同じ子供の父と母という関係であることは、これからも変わりません。

また、お子様との関係が良好になるためには、交渉相手となる妻(夫)(あるいは元妻(元夫))との関係でも、最低限度のコミュニケーションが出来ることが望ましいといえます。

そのためには、必要以上に攻撃的な姿勢を見せてはいけません。

例えば、

「面会交流の不履行1度につき、監護者は金〇〇円を支払う」との文言を合意書に入れて欲しい、との要求をしたらどうでしょうか。

相手方の印象は非常に悪化するといえるでしょう。

面会交流を実現するという目的のために、ペナルティによって強制をしようというのは、明確に悪手(あくしゅ)です。

このような条件で相手方が受け入れる余地はないでしょう。

むしろ、こちら側としては、

「養育費は必ず払うので、定期的な面会交流の機会を作って欲しい。」

程度の要望が穏当なのではないかと考えます。

相手方との信頼関係をつくることができてくれば、自然と面会交流も円滑に実施できる方向になるといえるでしょう。

そして、どうしても、信頼関係をつくることができず、面会交流も実施されない状況であれば、家庭裁判所の手続(→「6」)の中での解決を図ることになるでしょう。

 

2 面会交流と養育費(婚姻費用)は切り離して考える。養育費(婚姻費用)は必ず支払う。

面会交流を求めながら、養育費(離婚前であれば婚姻費用)を支払っていなかったらどうでしょうか。

相手方の印象も非常に悪くなりますし、裁判所への印象も非常に悪くなります。

(※なお、仮に、離婚前で親権を求めていた場合に、子供の監護者に対し、婚姻費用を支払っていなかったら、ほぼ親権を得るという目標を達成することはできないと考えてください。)

そもそも、養育費は、子供の為の費用です。子供を思うのであれば、絶対に払わなければなりません。

婚姻費用(離婚前)だって、子供と配偶者のための生活費です。相手方にお金を払うのが面白くなかったとしても、その意味合いは、子供の為の生活費であるとの色合いが非常に強いものです。

養育費も、婚姻費用も支払わなければ、困窮するのは、お子様自身です。

面会交流を求めるに際しては、絶対に、養育費も、婚姻費用も怠らずに支払わなければなりません。

 

3 養育費は必ず「子供の名義」の口座に支払う。

養育費を払うに際しては、相手方に子供名義の口座を作ってもらい、そこに支払う旨を伝えてください。

相手方が、自分も口座に支払って欲しいと言ったとしても、子供の口座に支払う旨を強く伝えても良いと思います(相手方も、支払ってくれるのであれば、子供の口座に支払ってもらうことについて抵抗をすることはないでしょう。)。

なぜ、子供名義の口座に支払う必要があるのか。

それは、後から、お子様が見た時に、自らが欠かさず子供の養育費を振り込んでいたことが、お子様の目に触れて、責任を果たしてきたことが伝わるからです。

仮に、相手方との関係が非常に悪く、お子様の年齢も小さかった場合には、なかなかお子様と円滑なコミュニケーションを取ることが難しいと考えられます。

しかし、お子様も時間が経過すれば、当然成長して、自分の意思を持ち始めます。

仮に、相手方の影響で、ご自身への印象を良く思っていなかったとしても、どこかのタイミングで自分の通帳を見て、自分名義の口座に欠かさず養育費が振り込まれていたら、どう思うでしょうか。

「親としての責任を果たしてくれたんだ」ということで、関係が良い方向に進む一つの契機になるのは間違いありません。

その意味でも、お子様の名義に振り込み続けるということは、長期的にみると非常に重要なポイントになると考えます。

 

4 仮に思ったように面会交流ができなかったとしても、養育費(婚姻費用)は払い続ける。

仮に、思ったように面会交流ができなかったとしても、養育費(婚姻費用)は払い続けてください。

・・・不合理に思われるかもしれません。

しかし、面会交流も、養育費も、どちらもお子様の為の権利なのです。

「面会交流が実現できなければ、養育費は払わない」という姿勢は、子供に対して、「自分に会わなければ、養育費は払わない」と言っているのに変わりはないのです。

いくつか、この点について補足いたします。

まず、面会交流はお子様の為の権利です。

つまり、「子供が親に会う権利」であり、「親が子供に会う権利」ではありません。

「お子様が会いたいときに、自分の親に会うことができる」というのが最も望ましい状況なのです。

しかし、お子様が成長するに従い、中学(高校)の学校の部活が忙しくなったり等して、自分の望むような頻度で面会交流が実現できないことも観念的にはあり得るでしょう。

場合によっては、お子様が「反抗期」のような時期に入って、自分に会いたくないと言うこともあるでしょう(しかし、それも自然な成長の過程です。)。

お子様も独立した人格をもっておりますから、相手方も、お子様の意思(あるいは都合)を無視して、無理に面会を強制することは出来ません。

そのような状況の中で、思ったように面会交流が実現できないことも、長い、継続的な関係を考えれば、十分にあり得ることです。

しかし、そのような時にこそ、養育費(婚姻費用)は欠かさず払うべきです。

このように、関係が良好とはいえないときに、養育費(婚姻費用)を継続的に払っていればこそ、

長期的に、「お子様との関係」において、良好な関係を築ける可能性が高まるのです。

 

5 長期的利益を見据える。子供と長期的に良い関係を築くことこそが得られる最大の利益。

その意味で、お子様との関係においては、長期的な利益を見据えていただければと存じます。

お子様が成人をすれば、そのそも、親権という概念はなくなります。

お子様が成人してからその後の関係のほうが、むしろ長いとすら言えるのです。

その時に、親権等の概念から解放されたお子様と、良好な関係を築くことができるかは、それまでに、ご自身がどのような対応をしてきたかで決まります。

・お子様の気が乗らないのに面会交流を過度に求めた

・養育費を面会交流の支払の条件にした

・養育費を払わないままの状況を放置していた

等があれば、どこかでお子様にそれは伝わります。

そして、そのような空気をお子様は敏感に察知しますから、やはり、成人後であっても、良好な関係は期待できないでしょう。

 

むしろ、

仮に、面会交流を望んだような頻度出来なかったとしても、

殊更に相手方やお子様を責めることなく、

面会交流が実現できる時を待ち、

一方で、養育費の支払等、自らの責任を果たし続けた場合はどうでしょうか。

そのような姿勢の方のほうが、長期的に見れば、お子様と良好な関係を築ける可能性が高まると言えるでしょう。

私の知り合いや依頼者の方の中にも、離婚して、相手方に親権があったお子様と、そのお子様が成人後、良好な関係を築き、

現在は一緒に働いているという方もいらっしゃいます。

そのような、長期的な利益を見据えていただければと思います。

やはり、

 お子様と長期的に良い関係を築くことこそが得られる最大の利益なのです。

 

6 最後に困ったら裁判所の手続きで。

そういう意味で、裁判所の手続により解決を図るのは最後の手段としなければなりません。

ちょっと面会交流が実現できなかったからといって、裁判所の手続に入るのではなく、子供の気持ちが変わるのを待ったり、時機が来るのを待つべきです。

それでも、

例えば、相手方が会いたがっている子供の気持ちを無視して、会わせなかったり、

子供を虐待しているのではないかと疑われたり、

必要な養育を放棄しているのではないかと感じられたりした場合には、

それは躊躇せず家庭裁判所への申立てをする必要があるでしょう。

手段としては、

・面会交流調停の申立て

・子の監護者指定の申立て

・親権者変更の申立て(緊急性が高ければ、審判前の保全処分の申立て)

・子の引渡の審判の申立て(緊急性が高ければ、審判前の保全処分の申立て)

等、色々とあります。

必要があれば、家裁調査官という家庭裁判所の職員が、お子様の本当の気持ちを聞いてくれます。

しかし、これらの裁判所上の手続は、最後の手段であるとご理解いただき、

そこまで緊急性が高くない場合には、

長期的な利益を見据えて、時機を待っていただくことも、一つ重要なのではないかと考えます。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

 

※ あわせて読みたい記事

その①

面会交流について~離婚~

その②

離婚をすると決めたら(総論)~離婚~

 

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弁護士 山田 雄太

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調停外で養育費を請求する際に意識したい3つのこと~離婚~

 

弁護士の山田雄太です。

 

今回のテーマは、「調停外で養育費を請求する交渉をする際に意識したいことです。

 

養育費というのは、お子様を育てていくにあたり、非常に重要な要素となります。

やはり、親として、絶対に継続的に支払ってもらいたいお金となります。

 

調停に入る前であれば、当事者間で養育費の取り決めをすることになる訳ですが、

養育費を月々いくらもらうかという取り決めをする際、

継続的に養育費を支払ってもらうために、

弁護士の視点としては、やはり、いくつか気を付けて頂きたい点があります(特に、離婚を争われたら離婚原因が認められるか怪しい方は、是非お読みいただきたいと思います。)。

 

今回、調停外で養育費を請求する交渉をする際に意識したいことを、大きく3点お伝えしたいと思います。

 

目次

1 (前提として)婚姻費用の請求を忘れていないか。

2 公正証書による合意を求めるか否か。

 長期的に継続して支払ってもらうという養育費の特殊性を踏まえて養育費の請求ができているか。

 

 

以下、本編において、それぞれの3つの視点について、ご説明いたします。

 

1 (前提として)婚姻費用の請求を忘れていないか。

(1)「婚姻費用」とは、離婚成立前に貰えるご自身とお子様の生活費を内容とします。

むしろ、子供の生活費に加えて、自分の生活費ももらえることになりますから、

養育費よりも貰える額が大きくなります。

養育費の交渉も長引くこともそれなりにあり、

その際に、離婚成立までに婚姻費用を請求するということは、

生活をしていくにあたり、非常に重要な要素となります。

離婚成立までに時間がかかる見込みの場合、

早めに「婚姻費用」は請求したほうがよいと思われます。

 

(2)一方で、早期の合意成立が期待できる場合、

あえて、婚姻費用を請求しないことが、交渉のカードになることがあります。

「早期に合意してくれるのであれば、あえて婚姻費用は請求しない」

というものです。

相手としては、合意に時間がかかれば婚姻費用を請求される(余計にお金を払わなければならなくなる)と考えますので、

「今であれば」という視点は、

合意成立に向けての一つのインセンティブになるでしょう。

やはり、養育費というのは、長期的な支払を内容とする合意ですから、

「目先の利益(婚姻費用)を捨てて、長期的な利益(養育費)を得る」

というのも、重要な選択肢だと思います。

 

2 公正証書による合意を求めるか否か。

次は、合意書の締結の仕方についての考え方です。

大きく合意書の種類としては、

「公正証書による合意書」

と、

「公正証書によらない合意書」

がございます。

双方のメリット・デメリット(リスク)についてご説明いたします。

 

(1)「公正証書による合意書」作成の場合

ア この場合のメリットは、何といっても執行が容易なことです。

養育費の支払については、非常に執行上の手当てが厚く、不払いになった場合に、給与に対して差押をすることができます。

その意味では、相手が養育費を不払いになった場合には、余計な手続きを経ることなく執行ができるので、養育費を貰う側としては保護が厚いと考えられます。

ただし、養育費の支払義務者がどうあっても支払う気がない場合には、転職をしてしまったり、あるいは、口座の預金も全て別のところに逃がしてしまうので、その先にまで追いかけられるかどうかというのは何とも言えないところがあり、公正証書によって合意書を作成したとしても、システム上の限界があるとはいえます。

イ 一方で、デメリットですが、公正証書の作成を求めるということは、「執行認諾文言」を合意書の内容に含めることとなります。

「執行認諾文言」とは、養育費の不払いがあった場合には、自己の財産や給与債権に対して執行してもかまいませんという養育費の支払義務者の言葉です。

この文言を相手に書いて欲しいと求めるといことは、相手からしたら、当然、面白くありません。

「自分が信用されていない」と思うわけです。

そうなると、そもそも最初は「離婚の有無」や、「親権」について合意が得られていたとしても、最悪、「やっぱり争うことにする」と言われてしまうリスクもあります。

この展開は、

離婚原因が明確に認められるか微妙なケースの場合には、非常に恐ろしいことです(離婚を争われると、離婚成立までに3年や5年の別居は覚悟しなければなりません。)。

そのため、公正証書による合意を求めるか否かは、

相手方の性格次第ですが、慎重に検討しなければならないと思います。

 

(2)一方、「公正証書によらない合意書」を作成する場合

ア この場合のメリットは、何といっても、合意書締結まで一直線に行けることです。

養育費と婚姻費用についても、条件にそこまで乖離がなければ、合意のハードルは、公正証書による場合よりも低くなります。

その際、「離婚」と「親権」を重視していた場合には、その目標には最短で至ることができます。

養育費の不払いについても、(あえて言い方を選ばなければ)所詮は金銭の問題です。

もちろん、軽視できるものではありませんが、離婚とか、親権について最短で望む解決できることと比べた場合、後者の解決は大きな価値があるものであると考えます。

イ 一方で、この場合のデメリットは、執行が容易ではない点です(公正証書での合意のメリットの裏返しですね。)。

この場合、合意書を基に訴訟を提起し、確定判決をもらい、その上で執行をする必要があります。

当然、非常に迂遠で、時間も労力もかかります。

確定判決を貰ったとしても、財産を隠されて、執行できなリスクもございます。

正直に言って、養育費を不払いにされた際に、

訴訟を起こしてまで、養育費を回収するには、お金も精神力も必要となりますから、

かなりハードルが高いものとなります。

養育費を不払いにされたまま、それ以上のアクションができない大きな理由の一つには、「公正証書による合意書」を結べていないことが挙げられると考えます。

このリスクも当然軽視できないものではあるとは思います。

 

(3)以上を踏まえて、公正証書による合意書締結を揉めるかどうか、ご検討いただくことになりますが、

最後は、相手方をどこまで信用できるかということと、自分の経済力としてどこまで支える自信があるかといことになろうかと思います。

相手方が、お子様を思っていれば、子供の為に、養育費はしっかり払うでしょう。

一方で、信用できない人物だったとすれば、不払いのリスクは当然ございます。

その点については、相手方のキャラクターを含めて、ご検討いただければと存じます。

もう一点は、不払いをされた場合のリスクをどこまで取れるかということです。

経済力がない方ですと、どうあっても公正証書にしなければなりません。

執行まで時間がかかっては、生きていくのがかなり厳しくなってしまうからです。

しかし、養育費がなかったとしてもなんとかやっていけるというのであれば、公正証書に強くこだわらないことも選択肢の一つです(ただし、ここまで経済力がある方は、なかなか多くはないのではないかと思います。)。

 

(4)やはり、最後は、何を重視するかです。

もちろん、公正証書についても、すんなり合意してくれる可能性も十分にあります。

でも、へそを曲げて、「やっぱり離婚しない」と言われるリスクもございます(離婚原因が認められるか微妙なケースでは、何としても避けなければならないことです。)。

「離婚」と「親権」が何よりも重視している場合には、

その可能性をどれだけ高めて、どれだけリスクをとることができるかが重要ではないかと存じます。

 

3 長期的に継続して支払ってもらうという養育費の特殊性を踏まえて養育費の請求ができているか。

(1)養育費を払ってもらう立場からしたら、「子供のために少しでも多くのお金が欲しい。」、「多くのお金を支払う合意を締結したい。」

と思われるかと思います。

当然です。

子供を育てる責任を負う者として、経済面は絶対に不可欠な視点だからです。

 

(2)しかし、

養育費の交渉をするにあたり、敢えて申し上げるべきことがございます。

それは、「養育費の支払」という特殊性に目を向けて欲しいと言う点です。

養育費の支払というのは、単発の一回きりの支払と異なり、

「長期」かつ「継続的な」支払となります(住宅ローンの返済に類する性質です。)。

そうすると、「一回払っておしまい」では、たくさん払ってもらった方がいいに決まっていますが、

「長期」かつ「継続的な」支払であると、

養育費の支払義務者たる相手方の経済状況、あるいはキャッシュフロー

にも目を向ける必要があります。

 

(3)養育費の不払いの原因は、元配偶者との関係が悪化することにもありますが、

最大の原因は、経済状況の悪化により、養育費の支払いが大きな負担になってしまうことにあります。

養育費の支払の約束というのは、合意後15年や18年等の非常に長い約束となります。

合意時に、より多くのお金を支払ってもらうとの合意を取りつけるということができれば、短期的には大きな成功といえます。

しかし、多くのお金の支払の合意を取り付けるということは、支払義務者にとっては、その分だけ負担となることになります。

 

(4)短期的に多くの額の支払の約束を取り付けることができたとしても、将来的に支払義務者が養育費の支払を大きな負担と考えて、不払いになってしまったら、せっかく大きな額の支払を約束できたとしても、水泡に帰してしまうことになるのです。

多くのお金を支払ってもらうとの合意を取り付けたことが初めて意味を持つのは、最後まで継続的に支払ってくれた時です。

途中で不払いになってしまったら、多くの額を支払ってもらうとの合意をした意味はもはやなく、かえってマイナスになるとすら言えるでしょう。

執行というのはそれだけ大変であるし、転職された場合等にそもそも追いかけられないリスクすらあるのです。

多少額が少ない合意となっても、相手方に15年以上の長期間自発的に払わせ続けるということが何よりも重要なのです。

自発的に支払わせ続けることができれば、それこそが最大の成功といえるのです。

 

(5)その意味では、長期的な利益を見据える必要があるかと存じます。

短期的に良い条件の合意を取り付けられたことが直ちに成功を意味しないのです。

長期的に、どうしたら支払ってもらうかと視点で交渉する必要があるのです。

そこが、養育費の合意の難しい所でもあるのです。

やはり、不払いを避けるためには、

相手のキャッシュフローを意識して、

「継続的に払っても相手が生活できる額とすれば、いくらだろうか」

という視点も重要になるのではないでしょうか。

 

以上、3点、意識して頂きたい点を申し上げました。

養育費の交渉に際して、何か、不明点や不安な点があれば、

遠慮なくご連絡頂ければと存じます。

 

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