紛争の解決手段(2)~裁判上の和解~

 

弁護士の山田雄太です。

 

前回(紛争解決の手段(1))の続きです。

今回は、裁判上の和解について、少し踏み込んで検討したいと思います。

結果的に、裁判上の和解をすることになるとしても、判決をもらうことを前提とした主張立証を尽くすという点については変わりません。弁護士としては、和解で得られる数字が少しでもよくなるよう、主張立証に全力を尽くすことになります。

ただし、進行している訴訟のどの段階で和解をするかによって、双方の合意に基づき柔軟な解決をするのか、判決に近い内容で解決をするのかが変わることがあります。

 

裁判上の和解は、裁判の進行に応じて、大きく二つに分かれます。

それは、「証人尋問前」の和解と、「証人尋問後」の和解です(証人尋問には本人尋問も含むものとします。また、証人尋問については後日検討します。)。

証人尋問前であれば、裁判官は明確に心証(裁判官が考える事件の方向性)を形成しない段階での和解となるため、原告被告双方が求める数字を示して、双方譲歩しつつ妥協点を探すということになります。

ただし、この段階だと、双方の要求する数字に隔たりが大きいことが多く、なかなか妥協点を見つけるのが難しい場合が多い一方で、双方の合意に基づき柔軟な解決ができることもあります。

一方で、証人尋問後であれば、裁判所はかなり明確に心証を形成していますから、むしろ、裁判官が和解案を提示します。この和解案は、実質的にはほぼ判決に近い内容になっています。

この段階に到ると、判決の内容がほぼ想定されるので、双方裁判所の提案を受け入れる可能性が高くなります。

では、事案によって、「どの段階で和解をするべきか」というのが変わることもあるのでしょうか。

以下に、①明確に勝ち筋が見えているとき、②見通しがなかなか立たないとき、③勝ち目が薄いと思われるとき、に分けて検討したいと思います。

①手元にある証拠等との関係で、明確に勝ち筋が見えているときは、基本的には、取り得る選択肢が広くなると思われます。

当然、仮に判決になっても勝訴が見込めるわけですから、証人尋問前の和解を試みる段階でも、強気の提案をすることになります。そこで、相手がこちらの提案に近い形で受け入れてくれるのであれば、それでもかまわないということになるでしょう。

もちろん、相手の主張と隔たりがあることもまま考えられますが、その場合には、証人尋問をしてもらって、「裁判所に和解案を出してもらうということでもかまわない」と考えることになります。

その場合であっても、裁判所は判決に近い内容で和解案を提示しますから、裁判所の提案を相手が渋々受け入れて、無事に解決ということが十分に考えられると思われます。

②なかなか訴訟の見通しが立たないときは難しい判断となります。もしかしたら、こちらが敗訴判決をもらう可能性が否定できないことを頭に入れて行動する必要があります。

もし、証人尋問前の和解の話し合いの中で、相手側からある程度の数字の提案が示されたときは、内容に多少の不満があっても乗ることも十分に考えられます。

あえて、そこでリスクを負って、証人尋問をして、その後に出てきた裁判所の提案が想定以上にこちらに不利なものであった時、難しい判断を強いられることになってしまいます。

もちろん、証人尋問前の相手方の提案が納得できない場合には、やはり、証人尋問まで突き進まざるを得ないこともままありますが、その時にはリスクも伴うことを十分に理解して進むことになると思います。

③明確に勝ち目が薄いと思われるときは、はっきり証人尋問前に和解をするべきです。

このままだと敗訴判決を免れられないということが事前に想定されるとき、証人尋問まで突き進んだらどうなるでしょうか。

裁判官は、明確にこちら側が負け筋であることを前提として、ほぼ敗訴判決そのままの和解案を提案してくることが十分に想定されます。

そうなることが想定されるのであれば、傷口が浅い証人尋問前(裁判所が心証を形成する前)に、なんとか和解をまとめるという方向で全力を尽くすべきでしょう。

このように、想定される見通しによって、どの段階で和解をまとめるよう努力するか、ということは変わってくることがあり得ます。

もちろん、依頼者の方にとって証人尋問というのは本当に大きな負担ですから、それを避けて、証人尋問前にまとめるというのも一つの選択でしょう。

ケースによって取り得る対応は異なるところですが、やはり、見通しによって対応をよく検討するというのは、非常に重要になるといえるでしょう。

 

※ あわせて読みたい記事

その①

紛争の解決手段(1)~裁判上の和解、判決~

その②

紛争の解決手段(3)~判決~

その③

紛争の解決手段(4)~裁判外(前)の交渉

山田法律事務所  弁護士  山田 雄太

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